究極の言葉
この森に滞在しているとあらゆることが勉強になり、あらゆることに気づかされる。こんな所に日本の高校生、大学生を連れてくれば、彼らにとって大きな財産になるような気がする。と思っているとドイツ人がやってきた。聞けば大手自動車メーカーのドイツ国内のトップディーラーたちに研修旅行団がカンボジアに来るらしい。その折、この村の訪問を計画したいとの相談だった。森本さんのもとには日々こんな人々がやって来る。学生ばかりではない、大人も十分研修すべきなのだ。
普段は忙しい森本さんが奇跡的にこの2日間来客もなく、急ぎの用事もなかった。そして私と合計10時間以上に渡って向き合ってくれた。これは稀有なことではないか。私に誰かが森本さんを引き合わせ、そしてじっくり話を聞く機会を与えてくれた。
ここでその全てを書きだすことはとても出来ない。心に引っ掛かった言葉をいくつか挙げてみたい。『心のこもっていない物は手造りとは言わない』、これは何という名言か。村の人々作業を見ていると素人でも、その丁寧な動作、真剣なまなざしが伝わる。
『本当にいい物を作ればどんな不況でも売れる』現代は大量生産、消費の社会であるが、いずれは不況になったり、戦争になったり、現在の計画通りに行かないことが多い。その時でも、本当にいい物であれば、必ず買う人がいる。だから目標は高く『世界一の物を作る』。これも現代社会に警鐘を鳴らしつつ、エコなどと言いながら使い捨て全盛の世の中を批判している。
『村の人々には腕に見合った仕事をして欲しい』手仕事の素晴らしい技術をもった職人さん達が作った織物を商人が買い叩いて行く場面を見て、この村を作る決意をしたという。職人が買い手に直接売る、そしてその良さを分かち合う、これも大切なことだ。
『事業には適正規模がある』これも現代の事業拡大一辺倒に警鐘を。この村でも一時は500人まで村人が増えたが、これは適正規模を越えたと判断し、去っていく者の補充をせず。現在の200人を適正規模と考えて運営している。売り上げを伸ばすことが重要ではない、適正な利益を確保し、安定的に維持していくことが重要。
『マニュアルだけは自然は染められない』この村では化学染料を一切使っていない。自然は常に変化するもの、自然と如何に向き合い、自然を色に出来るか、これは簡単ではないが、それが実行できる環境がここにはある。