豪華なホテル
そして市内に入った。今日の宿は、何と何と5つ星ホテル。どうなってるんだ?実は東京を出て来る前の日、事務所の忘年会でSさんから「シェムリアップ、行くんだったら、俺のホテル使っていいよ」と言われていた。
俺のホテル?Sさんは作家で様々な媒体に寄稿しているが、その内の一つが原稿料の代わりにホテルの部屋を提供している。なるほど、こんな仕組みもあったのか。そこで好奇心も手伝い、お言葉に甘えて泊めて頂く。
このホテルです、と現地で言われたが、どこにあるかもわからないし、どんなホテルかもわからない。住所通り、サレンに連れて行ってもらうと、何と郊外の立派なホテルだったという訳。お客は韓国と中国の団体さんが多いようで、ロビーには中国語、韓国語が飛び交っていた。その中をサンダル、短パンで入って行き、チェックインをお願いすると最初怪訝な顔をされたが、日本パスポートが効いたのか、非常に親切な対応であった。
部屋も広く、快適。シャワーを浴びて、暫し眠りに着く。夢の中で、自分が自分に聞いていた。伝統の村より、こっち方が良いだろう。と。何だか悪魔の囁きのようで怖い。勿論快適なのは快適だが、この時の私はこの部屋に満足することもなかった。心が満ち足りている限り、寝る場所はどこでもよく、食べる物も何でもよかった。
その夜は、街道沿いのホテルを出て、ガソリンスタンド横のレストランに入る。言葉が全く通じないが、何とかオーダーして食べる。夜風が爽やかだが、伝統の森の風は全てにおいて違っていたことを知る。