お金でアジアをエンジョイするのか
夜7時にチェンマイ市内で待ち合わせがあるというとTさんは車で送ってくれた。その上、2時間ほど市内で時間を潰し、私をピックアップして、自宅を連れて行ってくれた。大変申し訳ない思いだが、確かに自力でTさん宅へ戻ることは出来ないので、お言葉に甘える。
待ち合わせたのは、元勤め先の後輩N君。ちょうど旅行でチェンマイに来ていたN君と日程がぴたりと合ったので、会うことにした。東京在住なので、東京で会えばよいのだが、これも何かのご縁。今回チェンマイ市内を見ることもなかったので散歩がてら行く。
マクドナルドの前で待ち合わせ。良く見るとドナルド人形がワイしている。ワイとは合掌のこと。これはタイならではないか。バンコックも同じ仕草だろうか。
N君はチェンマイに慣れていた。何度も来ているようだ。彼は元勤め先に内定した時、香港に旅行に来て、私が勤務していた香港支店に寄った。その後会うこともなく、過ぎたが、いつの間にかお互い勤務先を辞め、彼は転職した。でも出来ればアジアで働きたいという。私は月並みなことを口にした。『アジアはいい所だが、給料は安い。日本の給料でアジアを旅するから、良く見えるのかもしれない。もう一度よく考えてから、アジアの職を選ぶのが良い』と。
しかし話している自分に違和感も持った。お金を持って初めてエンジョイできるアジアは、本物ではあるまい。それでもいざとなるとお金でアジアをエンジョイしてしまう、この発想は実に危険だ。
N君は何度か来たという焼き鳥の店に連れて行ってくれた。地元の人が行く店に見えたが、メニューに日本語も書かれている。だが英語は片言しか通じない。N君は店の人とも顔なじみのようで、スムーズにオーダーしていく。チェンマイで触れ合う、それがアジアをエンジョイすることなのだろう。少し考えた。