(2)工場見学
直ぐに茶畑に行きたかったが、ちょうどフランス人が取材に来ていて、ご主人が連れていったと言うことで明日お願いすることに。代わりに近くに移った工場へ行って見る。以前はメーサローンビラの下のスペースで作業していたが、今ではホテルの下は使っていない。工場のスタッフが車で迎えに来てくれた。
工場は想像したより大きく、更に増築中。やはりかなり生産量が伸びている。既に午後4時であり、今日収穫した茶葉は天日干しから、室内へ移され、乾かされていた。更に中央には非常に大きなスペースがあり、台湾製の機械が並んでいた。壁にはこれまでの歴史、訪問した著名人の写真などが張られているが、何だか小型体育館のよう。
オジサンが入ってきた。台湾人の茶師。阿里山から来たそうで、59歳。前回私が訪れた直ぐ後にここに来て約5年。彼は厳しく現地スタッフを指導していた。茶の品質もかなり向上したという。「阿里山に比べればここのお茶はまだまだでしょう」と意地の悪い質問をしても、「茶は阿里山で採れてもよくない物もあり、ここで採れてもよい物もある。一概には言えない」と自信を覗かせる。
メーサローンは特に気候と土壌が茶の栽培に適しているという。そこに台湾の茶樹を植え、台湾の技術を使い、台湾製の機械で作り上げるのであるから、良いお茶が出来るはずと。基本は高山茶であるが、最近は台湾や大陸のブームにより、紅茶の生産も始めた。ここの紅茶は茶葉を丸めて作り、香りと甘みがあり、良くできている。
台湾への輸出が中心ではあるが、ヨーロッパからの注文も増えており、また中国へ直接売り込むことも始めた。台湾と遜色ないお茶が作れれば、コスト面からタイ産は極めて有利になるとみる。
茶作りに休みはない、と工場に寝泊まりする茶師の張さん。65歳の定年まで台湾に帰らず、ここで働くという。若者が選った茶葉を指し、「こんなに枝が入っているじゃないか」と怒鳴る姿に昔の日本人の匠のイメージが重なる。