(3)メーサローンビラ
メーサローンビラは今から25年前の1986年に作られた。この村は国共内戦で敗れ、ビルマに逃れた国民党軍とその家族が、更にビルマの革命により、その地を追われ、苦難の末辿りついた場所であった。1970年代蒋介石が亡くなった頃には大陸への反抗は実質的に不可能となり、この山の国民党軍にも転機がやって来た。
1974年、段希文将軍がタイ国王の謁見を賜り、当時の幹部の一人、雷雨田将軍は、「メーサローンで観光と茶を主産業とする」という方針を打ち出した。タイに土着するシグナルである。そしてメーサローンリゾートと言うホテルを作り営業を開始。当時雷将軍のもとで支配人を任されたのが現在メーサローンビラのオーナーである、李泰増氏である。
彼はその後自らホテル事業に乗り出し、メーサローンビラが誕生する。それでも最初は簡単にお客が来るわけでもなく、台湾人観光客が僅かに来ただけであったらしい。現在の繁栄は25年の努力の賜物である。
李氏夫人の楊明菊さんは、1984年に生まれ故郷のミャンマー、ラショーから台湾へ働きに行く途中、親せきのいるこの地に寄り、そのまま李氏と結婚。ビラ開業当時から苦楽を共にしてきている。
現在傾斜面に60室を有し、茶畑が望める景色を持つメーサローンビラ。バンコックから見ればチェンマイでも十分涼しいようだが、ここまで上がってくれば本当に避暑が可能となる。
尚このホテルの建物正面には女性軍人の写真が飾られている。李氏の母親、梅景女史である。彼女は雲南出身、国民党の黄埔士官学校の一つを卒業するなど、幹部の一人。ご主人も雷将軍と同じ軍で働いたという。実はここの家族は歴史的には実に貴重な証人なのである。