紅茶畑
更に走ると集落が見えてきた。と同時に茶畑も見えてきた。道路の両脇の斜面に植えられている。かなりきれいに整備された畑だ。これは機械で摘む紅茶畑かと思っていると、上の方でおじさんと若者が二人一組で獅子舞のように?機械を動かしていた。やはり機械摘みだ。それにしてもオジサンが若者を叱っている。親子かもしれない。
ベトナムの紅茶生産は、旧ソ連への供出品として生産が始まったと言われている。ベトナム人自体は紅茶を飲む習慣はなかった。フランスの植民地時代に一部飲まれたかもしれないが、むしろコーヒーの方が名高い。ロシアは伝統的に紅茶を飲むが自国では茶葉が取れない。どうしても他国へ依存している。
共産国家に対してソ連は様々な経済援助を行ってきたが、その見返りも要求している。ベトナムに対しては紅茶が一つの要求品目になった。実は60年代初めまでは中国からも紅茶を輸入していた。同じ理由である。中ソ蜜月が断交に変わり、茶葉輸出も途切れたようだ。
またロシアンティーは基本的にジャムなどを入れて甘くして飲むため、紅茶の品質を追求することはあまりなかった。ベトナムの紅茶の質もそれほど高い物が要求されることはなく、そのまま数十年来た。ところが最近、この10年ほど、台湾が紅茶を求めてベトナムへやって来た。エンバイ市のあたりでも大規模な紅茶工場が台湾資本で作られ、近隣の農家から茶葉を買い取って加工している。道沿いになった1軒の工場を訪ねたが、生憎台湾人オーナーが不在で話は聞けなかった。ただ、恐らくは今見ていた茶畑の茶葉もこの工場へ運び込まれるのだろう。何となく不思議な気もするがこれが現実だ。