山の上の老茶樹
更に進むと車は山道をどんどん上る。山の上に茶畑が見えてきた。シャンチュエットに着いたようだ。だがズンさんにも当てがある訳ではなく、村に突撃し、1軒のお店に入り込む。そこにはこの辺の山で採れた奇岩というべき石が加工され、椅子やテーブル、工芸品として売られていた。何でこの店に入ったのか。
オーナーがやって来た。この付近の村はモン族が中心だが、彼はベトナムの主流、キン族。奥さんは他の少数民族の出身とか。20年前からこの村に住み、20歳の時からお茶作りをしているとのこと。最初は普通の緑茶を作っていたが、最近では中国に研究にも行き、高級緑茶を作っている。飲ませてもらうと、ベトナムの濃い緑茶ではなく、すっきりした感じのお茶に仕上がっている。ちゃんと冷蔵庫に仕舞ってもいる。この辺は中国での研究成果か。
茶器も中国から急須を買い込み、本格的に淹れている。ベトナムではローカルの安い茶器を使うのが一般的だから、この山の中では驚く。どうやら石のビジネスは上手くいっており、その資金をお茶に使えるようだ。因みに弟さんも石の事業を別途やっており、店は近所にあった。少数民族の人々は貴重な石があることが分かっても、それを如何に加工し、如何に売るか、そこには慣れていない。彼らはそこを繋いで、いいビジネスをしている。
この家の子供達が珍しそうに覗きこんでくる。近所の子供達も実に素直で可愛らしい。この付近では余所から来た人は珍しいのだろう。ましてや外国人となると滅多に来ないだろう。坂を少し上がると村の学校があった。3月のこの時期、山の上はかなり寒い。民族衣装の上からダウンジャケットを来ている子がいて少し驚く。学校は活気がある。学校に行く喜びがある。日本とは根本的に違う。
そして村にある500年の老茶樹を見せてもらう。ある家の前に数本の幹の太い茶の木が植えられている。きちんとプレートが嵌っていたから、ベトナム政府も認定なのだろう。現在は茶葉を摘むことはなく、茶を作ることもないが、作ったとしても美味しいとは思われない。それでもこのような木が、このような山の上の残されていることに重みがある。恐らくはこの木と同等、または更に古い木がベトナムのどこかにあることだろう。今度はそれを求めてもっと奥地に分け入りたい。