ハノイへの帰り道
帰りは一気に山を下る。そして元来た道をひたすら戻る。ところが意外にも、一度通ったにもかかわらず、結構違った風景に出会う。特にきれいな田園風景、段々畑などに興味を惹かれ、車を降りて歩いて見たりする。ここには私が子供の頃の風景が克明に残っている。ウットリする。
途中で昼食を取る。普通の家かと思うようなレストランに入る。裏で採れた野菜を炒めたようで新鮮でおいしい。食事が終わると、横には自らお茶を淹れ、寛ぐスペースがある。このあたりにお茶文化が垣間見える。人々はここでお茶を飲み、水タバコを吸う。ここは雲南省か、はたまた福建省か。驚くほどに似ているのは何故だろう。恐らくは昔中国からこの地に渡って来た人が伝えたのではなかろうか。
エンバイ市近くでハノイに向かう幹線に入る。そのあたりで鉄道の線路と遭遇。ちょうど列車が通るのか、遮断機が下りていた。どんな長距離列車が通るのかと期待して待っていたが、やって来たのは一両のみ。中国とベトナムはこの線論で結ばれているのだろうか。
幹線道路を快調に飛ばす。道路脇で何か果物を売っている。見れば私の大好物なザボンだ。中国では買ってよく食べた。ここでは試食もさせてくれ、ズンさんと運転手さんは大量に買い込んでいた。尚ここではザボンに塩を付けて食べる。日本でスイカに塩を掛けるようなものか。十分甘いのになぜ。そしてここにもお茶セットが用意されており、お茶を飲んだ。
ティエンクワンパゴダ、と書かれたお寺に寄り道した。ティエンクワンとは恐らくは観音か。13-14世紀に創建されたお寺はその後何度か再建され、現在は2000年に改修され、整備されている。ベトナム解放時、ディエンビエンフーの戦いの勝利したホーチミンがこの寺を訪れ、勝利を感謝したことから有名になっている。ズンさんも昔教科書で学んだ寺だと言っていた。
お寺の敷地は広大で、しかも寺の建物は小山の上にある。結構上るのが大変だが、信心のある人は老人でも自分の足で上がるという。門には中国語が書かれており、寺は中国の影響を受けていることがはっきり分かる。今でも寺の祭事には大勢の人々がハノイやベトナム全土からやって来て、この付近の渋滞は物凄くなるらしい。ベトナム人の信仰の一端を見る。
因みにベトナムでは以前は水田などに自らの家のお墓を建てることが出来たが、最近は禁止されており、市営の墓地を使用する。ハノイまであと60㎞ほどの所で、ズンさんが「この辺に母親のお墓があり、時々来ます」と言っていた。ベトナムでは戦争などで多く人が亡くなっている。お墓も足りなくなってきている。
ハノイに戻ると日が暮れていた。夕飯はホテルで教えてもらった汁なし牛肉フォーを食べる。これもなかなか美味い。この店は有名らしく、欧米人も沢山来ていた。店の従業員も英語が話せた。しかし量はそう多くはなく、また初日に行った店に行き、今度はカタ焼きそばのような物を食べた。これも牛肉が乗っており、美味かった。ハノイでの食事に殆ど外れはなかった。