茶屋の6代目と会う
そして今日のメインイベント。ハノイで19世紀から続くお茶屋さんを訪問。そこでベトナム茶の歴史を聞こうという企画だ。ズンさんが事前に根回ししてくれており、アポも取れている。お店に行くと、周囲は古い街並みの残しており、気分が盛り上がる。そしてお店も非常に古めかしい家屋に茶を飲ませるスペースがなかなか心地よい。聞けば50年前の建築物を借りて営業しているという。ベトナム戦争など相次ぐ戦争で、建物も全てが残っている訳ではない。
中は畳ではないが、板の間にござが敷かれているのか、椅子ではなく座るスタイルの部屋がある。正直ベトナム人の生活習慣が分からないが、恐らくはリラックスする空間として、直に座る文化があるのだろう。書画も掛かっており、雰囲気は出ている。裏には中庭があり、そこでもお茶が飲める。
この店の店主、6代目のスオンさんと話す。このお店は1800年代に初代の女性が茶葉を売り始めて、その後戦争などの混乱があった中、今日まで引き続き、スオンさんが父親の代を継いで6代目だという。スオンさんはお茶屋の主人の傍ら、実は新聞記者としても活躍しており、二足の草鞋を履いている。
この店には日本人の茶道家や仏教関係者なども立ち寄り、お茶の話をしていくという。中にはハノイで茶道のイベントをする人もおり、日本のメディアや雑誌でも紹介されている。スオンさんはハノイのお茶の世界の有名人だ。
ベトナムのお茶の歴史、彼によれば、それこそ戦乱で資料も散逸し、お茶屋も開店休業であった時期もあり、はっきりしたことは分からないという。当然であろう。いつからどんなお茶を飲んでいたのか、何故濃い、渋いお茶をハノイでは好むのか、分からない。1950年代にハノイでプーアール茶が作られていた歴史を聞いてみると、それも初耳とのことで、こちらが漢字で書かれた資料を提供した。
スオンさんのおじさんという人も傍で控えて聞いていたが、歴史はお手上げという感じでどこかへ行ってしまう。ベトナム茶の歴史は、老齢な茶樹が発見されたこともあり、これから少しずつ解明されていくと思われるが、資料がない以上、ある部分は憶測の域を出ないだろう。