茶工場と博物館
午後はアイファンさんの案内で、茶工場見学に向かう。トルコの茶業者は、国営のチャイクル1社でほぼ市場を独占している。最近民間企業も出てきたようだが、それでも85%以上のシェア握る。茶業試験場も国営なら、チャイクルも国営。アイファンさんの名刺にもチャイクルの文字が見える。実質的に一体なのだ。リゼの街には当然のようにチャイクルの工場がいくつもある。先ずは海沿いの最新鋭のきれいな工場に行って見た。だが、現在製茶は行われていないということで、何も見ずにあっさりと立ち去る。何だかもったいないが仕方がない。
次の工場は結構年季が入っていたが、工場は稼働していた。最初に工場の責任者を訪ね、挨拶する。するとやはりお茶が出てきた。そのお茶は例のセンチャ。日本人にはセンチャだろうと気を利かしてくれたのだ。だが、このセンチャには砂糖は入っていなかったが、ミントが交ぜられていた。「どうだ、味は」と聞かれたが、正直、うーん、という感じだ。「トルコ人は砂糖を入れない茶は飲まないが、ミントを入れれば飲むのではないかと期待している」とは責任者の弁だが、どうだろうか。
工場の責任者は広い個室に陣取り、如何にも街の名士といった雰囲気で貫録がある。リゼの街でチャイクルの工場長と言えば、相当の地位だろう。いや、全トルコでもかなりのステイタスかもしれない。ただ、その時代がかった対応は、トルコの茶業の前途を少し暗示しているようにも見えた。
工場に案内された。どこにでもある紅茶工場、ほぼ機械化され、人手はそれほどかかっていない。トルコのチャイは、細かく砕いて飲む。それ程厳しい基準で製茶しているようには見えなかった。一方センチャは日本から持って来た蒸機なども使い、力を入れて作っているように見えた。より美味しいお茶が出来、トルコの人がそれを飲むこと期待するばかりである。
一端試験場に戻り、また庭でチャイを飲む。兎に角一日中、チャイを飲んでいる。隣では格好いいお姐さん達がタバコをふかしながら携帯をいじり、チャイを飲む。今のトルコの一般的な風景だ。
街の中心部にある博物館へも行った。ここはチャイクルの博物館であるが、国の博物館と言ってもいい。初期の製茶機械など様々な物が展示されていたが、残念ながらトルコ茶の歴史についてはそれ程展示は無かった。もし一人でやって来て、ここへ来ても何も分からなかったと改めて思う。茶縁に感謝するばかりだ。
アイファンさんが時計を気にした。実は彼はこれからイスタンブールへ出張する。そんな最中に我々と一日付き合ってくれた。感謝してもしきれない。彼をトラブゾンの空港まで送り、我々も帰路に着いた。