安化千両茶の製造過程を見る
鄧さんは飲み過ぎで相当に気分が悪かったろうが、それから30分の山道を登り、工場に着いた。確かにここまで一人で来ることはほぼ不可能。これもご縁だな、と思う。雲っているが、空気も良い。
工場は思ったよりもはるかに大きかった。敷地内に入り、事務所で黒茶を飲む。何だかとても水が良いという印象。2009年頃までは普通の生産だったが、10年以降は生産が急拡大しているという。実はここでは黒茶だけではなく、春は緑茶、秋は紅茶も作っている。工場経営はそんなに楽ではない。
鄧さんはお父さんの工場を引き継いだ2代目社長。本日ちょうど40歳。私をどこかの茶商と間違えて、商売の話だと思って受け入れたようだ。本当に悪いことをした。だが、結果的には実によい出会いとなった。
そして工場へ入ると、何と千両茶を作っている所だった。これは滅多に見る機会がないと、写真を撮りながら見入る。千両茶は重さ千両からきた独特のお茶。茶葉を藁?に詰め、5人の男が足でそれを踏みつけ、転がして作る。これは大変な作業だ。伝統芸能的な雰囲気がある。殆ど作ることはなかったが、最近の黒茶ブームでニーズが復活、それでも毎日作っている訳ではないので、作業現場見学は貴重だ。
作業している5人のうち、熟練工は1人。後は若者。この作業は若者が良い。彼らは以前広東省などに出稼ぎに行っていたが、地元に職が生まれ、こうして故郷で千両茶を作っている。これが沿海部の人手不足現象の一端だと思われる。それにしても迫力がある。
鄧さんと工場前で記念写真を撮る。「来てくれて本当に良かった」と言ってくれたのが嬉しい。何だか鄧さん、泣いているように見えた。酔いのせいだろうか。