ウバ茶工場で
今度はバンダーラベェラからバドゥッラへ道を取る。途中にまた茶畑が見える。だが一部は茶畑を潰して、家を建てたり、農地にしたり、荒れ地となった所もある。かなり急な斜面である。ここもウバ茶の産地だと聞き驚く。
Halpewatteと書かれた一軒の茶工場の看板があったので、行って見る。ところがこれが急な坂の連続で難所。よくもまあこんな所に工場を建てたなという感じだ。相当に上り、景色も少し靄がかかった山々が望める素晴らしい所に工場はあった。ちょうど雨も降りだした。雨宿りの雰囲気だ。
スマが案内を乞うと、男性が説明を始めた。この工場は1971年に出来た新しい工場であり、だからこそこんな山道の上に作ることが出来たという。「山の上に工場を作らないと新鮮な空気が入らない。この空気が茶葉の味に大きな影響がある」と説明された。成程。
この地方の特徴は乾季には全く雨が降らないこと。6-9月は殆ど降水量が無く、その間に茶葉は諸成分を内包する。この条件がウバ茶のメンソール感を出し、特にイギリス人に好まれてきた。
しかし近年スリランカの茶葉生産量は横ばいか減少に転じている。輸出量世界一を誇っていたが、インドや中国、そしてケニアやベトナムが急追してきており、大きな転換期に来ている。中東のスリランカ紅茶購入の減少、ヨーロッパの不景気など色々と要因はある。
またスリランカ自体の問題として、茶葉の値段が上がらない、賃金も左程上がらない、茶農家を止める所も出て来ており、栽培面積も減少傾向にある。本当に良い一部のウバ茶にはかなりの高値が付くが、その後ブレンドされてしまうなど、その良さが理解されているのかも懸念材料。スリランカ茶の将来は決して明るくないと、男性は嘆く。
この工場は後発の為自前の農園も少なく、近隣の茶農家から茶葉を買い入れているため、特に影響が大きいのだろう。美味しい物を作るだけでは、成長しない難しい産業形態であるとも言える。