マニラを歩けない駐在員
昼過ぎに某日本企業を訪問した。フィリピン経済は好調だが、決して好調な産業がある訳でもなく、出稼ぎ者の送金によるところが大きいと聞く。そして貧しい家庭に送金が入れば消費にすぐ回るので経済はよい。ショッピングモールが多く出来ているのもその表れ。
また華人は福建人が殆ど。経済を牛耳っているが、大陸との関係は薄い。大陸からの投資はフィリピンにはあまり来ていないと聞き、意外な感あり。華人は国内だけで資金を回しているらしい。日本企業の視察は昨年の尖閣以降、増えてきているが、実際の投資は設備拡張などすでに投資している企業の活動が多い。やはりフィリピン投資はハードルが高いということだろうか。コラムには書いてみた⇒ http://www.yyisland.com/yy/terakoyachina/item/5685
何と言ってもマニラの駐在員生活で一番驚くのは、「公共交通機関乗車禁止」だろうか。バスも電車も、ジプニーは勿論、タクシーにすら乗ったことが無い人がいるのは異常。20年ほど前の誘拐事件はいまだに記憶にあるものの、もしそれ程に危険なのであれば、投資など増えるわけがないだろう。ちょっと違和感あり。フィリピンに駐在していても、庶民の暮らしなど全く分からないだろう。コンビニなど小売りの展開が始まっているが、一般フィリピン人の嗜好などはフィリピン人社員に任せるのかな。「チャイナタウンなど行きたくても行けないよ」という言葉がやけに複雑に聞こえた。
夜は香港駐在時代、2度ご一緒したWさんと会う。彼はわざわざホテルまで迎えに来てくれ、そして何とフィリピンの服をくれた。「これに着替えていこう」という。洋はあまり日本人らしい服装をしていくのは良くないという判断。着てみると着心地が良いので気に入ったが、一般のフィリピン人ならジーンズにTシャツだろう。返って意識し過ぎか。
車で海鮮レストラン街へ行く。ここはマニラ湾に近い。かなり賑わっており、観光客が市場風の場所で魚やエビ蟹を買い、レストランに持ち込んで料理してもらうスタイル。香港や福建にも良くあったな、と思い出す。
売り手のおばさん達は必至に声を掛けて来る。英語もあれば中国語もある。台湾、香港、中国大陸のお客も多い。広東語や福建語も飛び交う。面白い。ここの魚が安いのかは疑問だが、観光地としては良いかと思う。
ガルーパ、エビ、カニ、香港で食べる味だ。懐かしく、たらふく食べる。レストランも混んでいた。ようやく席を確保。団体さんが楽しそうに食べている。ここはフィリピンではない、感覚的には中国だ。フィリピン人の運転手さんはあまり味方がいない、といった雰囲気で黙々と食べている。夜遅くても子供も大勢いる。
Wさんいわく、「フィリピンには裕福な人もいるが、貧しい人も沢山いる。ニコニコして親切な人が、ある日はスリをするかもしれない。そんな簡単な社会ではない」「もっと自由に暮らしたいが、事件は日々起こっている」と。確かにそうかもしれない。日本人は単純に「マニラは危険な所」などと刷り込まれるが、実際には同一人物が日によって行動を変えることもあるかもしれない。それは勿論フィリピンだけの話ではない。