5月6日(月) 朝もはよから
疲れていたせいか、与えられたベッドに横になると直ぐに寝付いてしまった。そして朝までぐっすり。鳥の囀りで目覚める。理想的な目覚めだ。時間は朝6時前、周囲は明るく、おばさん達は既に起きていた。そして7時前に朝食が始まる。食べ終わるとおばさん達はまた茶葉を取りだし仕分け作業を始める。本当に地道な作業だ。何がそこまでさせるかと思うほど、黙々とこなしていく。近所のおばさんもやってきた。
私は散歩に出た。道端ではアヒルが伸び伸びと歩いていた。霧雨が降っており、今日も茶摘みはないようだ。茶畑に人影はない。ずーっと歩いて行くと工場が見えてきた。台湾人が投資して建てたという。何のためにこんな所に工場を?ある人曰く「台湾人は鉄観音というブランドが欲しいだけで、ここで茶を作ろうとは考えていない」と。確かに工場が稼働している様子は無い。
工場の前の丘に登るとこの街が一望できた。茶畑があちこちにある。元来がお茶の街なのだが、近年は金儲けに走る安易な製法で評判を落としている。手で作る世界を捨て、何でも機械で行い、促成栽培製法で、大量生産に走る。何とも残念な話だ。
近くに廟があった。中に入ると「毛蟹の故郷」の文字が見えた。お婆さんがやって来て、まあ茶でも飲んでけ、とばかり杯を差し出した。お茶を飲むのが当たり前の世界。ただ数十年前は自分で作った茶を自分で飲むことが出来ない時代もあった。国営時代は厳しかったという。現在は個人経営だから、何をしても良いのだが、それが結果として茶をダメにした。地方政府は打つ手がないのだろうか。
午前中から張さんと茶を飲む。張さんはもう本当に春茶は作らないと決めたようだ。「雨のお蔭でゆっくり話が出来る」と余裕のコメント。確かに茶作りが本格的に行われていれば、朝から茶など飲んでいられない。2階で作業している女性陣も呼ばれて降りて来て茶を啜る。私というお客がいたから、良いお茶が飲めた、とケタケタ笑いながらまた作業に戻る。
午後もぼうっとしていたが、再度茶作りの作業場へ行って見る。するとなぜか途中の道で張さんが何かしていた。「たけのこ、採ってるんだ。美味いぞ」と笑う。そして近くに生えていた巨大な長芋?も掘り起し「今日は大量だ」と叫ぶ。今日のご飯はその辺で調達する、何と自然な動作なんだろうか、と感心した。