バスで去る
帰りは路線バスを使って戻ることにした。大坪から厦門へ直接戻る方法はない。バスで同安へ行き、乗り換えるという。同安までのバスも一日4便しかない。午前10時半のバスを予約してもらった。何と家の前まで来てくれるというのが、田舎らしい。
バスが来るまで茶を飲んで待つ。名残惜しかった。いつまたここへ来られるか分からない。張さんがそれまで茶作りを続けている保障もない。そんなことを思いながら茶を啜る。出発の時間になってもバスは来ない。まあそんなものかと思っていると突如外でバスのクラクションが。皆一斉に飛び出しバスを止め、張さんは運転手に指示を出し、私を運転手の脇の席に座らせてくれた。あっと言う間にバスは走り出し、呆気ない別れとなってしまった。
バスは茶畑の見える山道を進んだ。それから一路山を下り、1時間ほどで同安の街に着いた。だが、同安から厦門へ行くバスが分からない。てっきりバスターミナルにでも入って、そこで厦門行きを探せばよいと考えていたが、運転手は道路脇で『降りろ』と言い、前方の普通のバス停を指すばかり。仕方なくバス停でバスを探したが分からず、近くの女性に聞いたところ、『私も同じ方向だから』と一緒にバスに乗せてくれた。
バスは普通の路線バス。ただひらすら大通りを厦門に向かって走る。しかし1つずつバス停に停まるので、なかなか進まない。それから1時間走ってようやく厦門市内へ。私を乗せてくれた女性は『終点まで行きなさい』とわざわざ声を掛けて降りていった。何と親切なのだろうか。終点の輪渡に着いた時にはへとへとに疲れていた。そのままタクシーに乗り、また華僑大廈へ戻った。料金は僅か1元だった。