両替
部屋は掃除中なので、先ずは両替。ホテルからすぐのところに台湾土地銀行があった。昔は政府系のお堅い銀行だったが、どうだろうか。恐る恐る入っていくと、如何にも昔の銀行の店舗という雰囲気、両替レートが出ている。人民元を両替したいというと、オジサンが対応に出てきた。元とパスポートを渡すと『お前、どっから来たんだ』と完全に怪しまれる。
確かにそうだ。日本のパスポートを持って、人民元を両替にこの島にやってくる人、しかも簡単だが中国語を話す、となれば、『中国人が帰化したんだろう』とでも思ったらしい。スパイ容疑?私が『20年前は台北にいて、台湾系銀行に在籍していた日本人』と話すと、何だか急に親切になった。
『ここには中国人が両替に来ることも殆どないからびっくりしたよ』とオジサンは言う。そして日本がどうしたこうした、と話に花が咲く。不思議な空間だ、ここは。大陸の人間は台湾へ行ってしまうか、観光客でも決まった場所しか行かないようだ。人民元が簡単に両替できることに少し驚いたが、よく考えてみれば金門島が人民元を受け取らず、台湾ドルへの両替を促していることがせめてもの救いのだろうか。そうでないと飲み込まれてしまうほど、この島は小さい。
外へ出るとなぜか葬式の行列に出くわす。これも実に台湾を感じさせる。車を何十台も連ねて、市中をゆっくりと走る。死者の弔いとしてはちょっと派手に感じられるが、悪い気はしない。