バタバタ茶会
伝承館に10名程度の人々が集い、茶会が始まった。茶葉を布で包んで鍋に放り込み、煮出している。皆さん、マイ茶碗、マイ茶筅を持ってきており、煮出した茶を碗に注ぐ。そして素早い動きで茶筅を碗の両側に打ち付け、バタバタ音をさせながら、茶をたてる。これがバタバタ茶の名前の由来だ。
この茶のたて方、飲み方がいつどこから伝わったのかは定かではないらしい。私が4月に訪ねた中国広西壮族自治区の梧州で作られていた六堡茶と製法が同じと言われているが、この町ではそれすら知られてはいない。茶は中国から来たのだから、この製法も中国から来たのでは?と言っても真実を知るすべがない。一応公式見解は⇒ http://www.shokoren-toyama.or.jp/~batabata/
仏教に絡んでこの茶が生まれたのではないか、との話もある。この付近は一向宗であるが、なぜか蛭谷には寺がないため、自宅で仏事、茶会をする習慣が残ったというのだ。お茶と仏教は深い関係にあるので、十分に考えられる。また蛭谷と川を挟んで対岸にある羽入は全く違う土地柄であることから、蛭谷の人々はいつの時代かに別の土地からやってきた、茶の製法も持ってきたのではないとの説もある。実際蛭谷の人々は非常に明るい。太陽が出る方角だから、というだけではあるまい。
そんなことを考えているとおばあちゃん達は、どんどん茶を飲み、ケタケタ笑いながらとりとめもない話をしている。『そんな混ぜ方じゃダメだよ』と手本を見せてくれたり、昔話をしてくれる。少なくとも皆さん、子供の頃から慣れ親しんだ茶である。おばあちゃんがバタバタやってくれると味がまろやかになり、美味しいのは何故。
『昔はお茶に塩を入れていたよ。そうすると美味しんだ。けど、最近は健康診断あるでしょう。すぐに血圧などに影響が出るから、今は入れないの』という。そういいながらも塩が置かれており、入れてみると何となく味がすっきりしているようだ。いずれにしてもこのお茶はあっさりしていて飲みやすい。
そしてお当番の家で作られた漬物、実に実においしい。最初は遠慮していたが、あまりの美味しさについつい手が出てしまう。自ら作ったキュウリや大根を漬けている。山菜も山から採ってきている。非常に自然な味だ。
あっという間に時間が過ぎ、参加者は開始同様、三々五々帰って行った。『さよなら』とも言わない人が多い。どうせまたすぐ会うからだろうか。帰ろうとするとお当番さんが『おにぎり作ったから食べていきなよ』と言って、漬物とおにぎりが差し出された。既にお茶会でお腹一杯だったが、ありがたく頂戴した。このおにぎりもうまかった。何とも幸せな茶会だった。感謝。
http://www.kurobehan.com/kouza/guide19/