バンコックに居ながら、バンコックを知らない。それではいけない、ということで、時間があるときはバンコック市内を探索することにした。今日はこれまで足を踏み入れていないラーマ5世の宮殿などに行ってみる。
なぜかBTSでパヤタイ駅へ。駅のすぐ近くに都会のオアシスがあると聞き、訪ねてみた。スアン・パッカード宮殿、確かにビルの間に挟まれたひっそりとした邸宅があった。建物に入り、100バーツを払い、荷物を預ける。そして隣の展示室へ。係のおじさんが、日本語の単語を連発して、案内に精を出す。どうも日本人観光客が多いらしい。この宮殿はラーマ5世(チャラロンコーン大王)の孫であるチュムポット親王の住まいとして建てられた。元はキャベツ畑(パッカード)だったことからこの名が付いたとか。今でもここだけは喧騒から逃れているようだ。
南の端に建つラッカー展示館。チーク材を使用した高床式建築で、2階は仏間になっている。内側の壁には仏陀の物語などが細かく描かれており、その煌びやかさがすごい。続いて展示館が並ぶ。鉱石や魚介類の化石、コーンと呼ばれるタイ舞踊の面や人形が展示されている。なんだかちょっと見入ってしまった。
楽器を集めた建物もあった。普通はあまり興味がないのだが、正面に飾られたソウサムサイ、という楽器が3本の弦を持つサンシンに似ていることに注目した。家主であるチュムポット親王も自ら弾いていたようだが、その姿は三線ではなく、バイオリンかチェロを思わせる。ある資料によれば、イランあたりの楽器が東へ行き胡弓やソウサムサイになり、西へ渡ってバイオリンなどになったとある。沖縄とタイ何か関連があるのだろうか。
靴を脱いで2階へ上がる。ここは建物が橋で繋がっている。宮殿の中心の建物にはリビングのような場所があり、庭が見渡せる。そしてそこにも仏間がある。信仰の厚さが感じられる。後ろ側には居間、寝室。写真はダメだったが、アユタヤ式の極彩色な茶碗が目を惹いた。どんなお茶を飲んでいたのだろうか。
おじさんが『庭の建物の写真を撮れ。背景はあれだ』と指差したのはAJINOMOTOと書かれたビル。日本人に対するサービスだろうか。そういえば大学の後輩Y君があそこで働いている。
そこから歩き始める。ひたすら歩くと、物々しい警戒と並木道が見えた。チットラダー宮殿、王家の住まいだ。その向こうには昨年訪れたマーブル寺院が見えた。昨年はここが警察の詰所扱いであったが、今年もこの周辺は警察の機動隊が立っている。デモは収まっているかに見えるが、予断を許さない雰囲気がある。
更に行くとラーマ5世騎馬像があり、その向こうには重厚な建物が見える。アナンタ・サマーコム宮殿、旧国会議事堂だ。入ってみたかったが、中国人の団体観光客が押し寄せており、断念。団体50バーツ、個人150バーツというのも何だか気に入らない。
そろそろっと、裏へ抜けるとそこには何とも美しいモザイクのような繊細さを持つ建物が見えた。ウィマーンメーク宮殿。ラーマ5世の住まいだ。議事堂の重厚さと住まいの繊細さ、このコントラストがたまらない。中へ入ろうとしたが、既に時間は4時近くで残念ながら閉館。その後ろにもいくつか建物があり、広々とした庭になっていたが、基本的に閉館。入場する時のドレスコードだけがやけに目につく。しかも中国語が。
外へ出ると、そこも警戒厳重。バスも迂回を余儀なくされる。何とか戦勝記念塔まで戻り、BTSで帰宅。今日は結構歩いた。よく眠れそうだ。