7. 氷見
観光案内所は案内してくれるの?
氷見線という電車に乗った。僅か一両。何とも微笑ましい。欧米人や中国人などが乗っており、意外と国際的。彼らは途中の海岸のある駅で降りてしまった。有名な場所なのだろうか。私はゆらゆら揺られて終点まで。
駅には観光案内所が併設されていた。『今日泊まりたいんですけど』と声を掛けると、60歳を過ぎたと思われる男性が『一人?電車で来たの?』と聞いてくる。何だか変な感じ。ここは駅なのだから電車できても不思議ではないだろうに。そして1軒の宿(1泊2食付き7000円と言われた)に電話を入れてくれたが、何と満員と断られる。今日は日曜日、その夜に満員とは、はて。
おじさんが困った顔をしてパンフとにらめっこ。そこには40軒以上の宿が記載されていたが、『受けてくれるところがあるかどうか?』と不思議なことを言う。『駅の近くのビジネスホテルに泊まったら?』と言い出すおじさん。さすがに『民宿に泊まりたいから氷見に来たんです』と若干語気を荒げると『そうですよねー』と。そんなに混んでいるのか、と思っていたが、どうやら『おひとり様お断り』が多いらしい。結局何とか1軒受け入れが決まる。9600円に料金も跳ね上がるが仕方がない。
送迎はないので、バスで行け、と言い、時刻表のコピーをくれる。しかも入室は3時以降だから、それまでは行くな、とも言う。『ではこの辺で見るところはありますか?』と聞くと、なんとなんと『この辺り見るとこ、無いんだよね』だと。観光案内所が案内しない、どういうことだ。おまけに『じゃあ、適当に歩くから、荷物を預かって』というと、『預かってもいいけど、この間無くなったことがあってね、それでも良ければ』と言い放つ。もう何とも声が出なかった。ちょうどコインロッカーがあったので、何とか荷物を押し込む。ここの街には客を受け入れるという考えはあるのだろうか?一体どんなところなのだろうか??
藤子不二雄の出生地
憮然としながら、街を歩く。日曜日なのに商店街に休業が多い。これは街の伝統か、それともシャッター通りか。街の中にキャラクターがあちこちにある。忍者ハットリくんや怪物くん等。何とここは藤子不二雄Aさんの出生地だった。Aさんはお寺で生まれたようで、宗光禅寺という寺にはモニュメントまであった。アニメファンなら喜ぶだろう。地元の人は見慣れているから何とも思わないかもしれないが、これはなかなかいい。どうしてそのような説明はないのだろうか?
氷見の港も晴れ渡り、風が気持ちよかった。その先には道の駅があり、ここにはかなりの人が来ていた。とにかく皆車で来る。電車で来る人など想定していないのだ。海の幸もあり、屋外で食べ物を食べることもできるいい場所だが。
運河沿いにヒミング(http://himming.jp/)という倉庫を改造した喫茶店、いやアートギャラリーがあった。ちょっと中を覗くと、おじさんが『よかったら、寄ってって』というので、そのままギャラリーを見て、2階に上がり、座り込んでしまった。ここは何とも居心地が良い。NPOが経営しており、大学生がボランティアをやっているようだ。その手作り感と丁寧さが良かった。観光案内所とは大違い。ぼっーと過ごす。