『バンコックを封鎖せよ』というスローガンで始まったバンコックの大規模デモ。昨日は緊張の内にスタートしたが、情報を見る限り、大きな混乱はなかった。今日は明日からのインド行に備えて、買い物や銀行へ行くため、街に出たついでにちょっと様子を覗いてみた。
いつものようにスクンビットの外れからバスに乗る。普段と変わらない。ただ無料バスが4台続けてきた。いつもはスクンビットを突き抜ける2番というバスに乗ったが、途中のエカマイで進路を北に取ってしまう。仕方なくBTSに乗り換え。午前10時台としては混んでいた。プロンポンのいつも行く銀行はかなり空いていて、すぐに順番が来た。聞けば、昨日もお客は少なかったという。因みにタイ株式市場、昨日上昇に転じている。為替も思ったほど落ちていない。取り敢えず混乱なし、と市場は見たのだろうか?
お昼ご飯、プロンポンのいつもの定食屋へ行く。普段と変わりない混雑だが、中に学校や幼稚園が休みになってしまった日本人母子がちらほら。いつまで休むつもりだろうか、学校。
そしてプロンポンからアソークまで歩いて行く。今日は日差しは強いがさわやかな風が吹く。なぜか空も心持青く、空気もよい。これは車が少ないせいだろうか。途中で道路が一部封鎖され、アソークの交差点へ行く道が制限されている。バスはここで迂回する。
交差点付近は野外ライブの会場のようだ。四方の道は全て塞がれており、路上に紙を敷いて座る人、無用に歩き回る観光客などでごった返していた。ステージ上では上半身裸の男性が何か盛んに喚いているが、時折笑いが起こる。周囲の皆はホイッスルを吹き、旗を振り、記念写真を撮り、楽しんでいるようにしか見えない。路上には屋台が並び、デモグッズが大量に販売されている。これだけ見ればお祭りだ。宝くじ売りもいつもより多い気がする。後方にはテントが張られており、長期戦の構えもある。
一角でどよめきと歓声が起こる。大勢がテントの方に殺到し、写真を撮ろうとしている。アイドル歌手でも来たかと思ったが、どうやらこのデモの主導者、スティープ氏が演説を終わり、立ち去ろうとしているところだった。噂によれば、デモ参加者は減ってきている。テコ入れのためにも各地を回っているのだろう。
前回11月にもデモを見学したが、その時は『タイのお祭り』と位置付けてみた。今回も基本的には変わらないが、正直ここまで大規模に、市民生活を犠牲にしてまで、デモを実行することは我々には理解できない。しかし我々に理解できないことをすぐに『法治国家でない』とか『民主的でない』と切り捨てることは簡単だが、不思議と見えない何かの力が働いているように思えてならない。
今回の騒動、根本的には既存勢力と新興勢力の利権争い、であるとは思う。だが庶民はいつも振り回されるだけなのだろうか。貰うものはしっかり貰い、楽しむところはしっかり楽しむ、強かな人々がそこに居る。タイは太古より現在まで、このような事態を繰り返しているのかもしれない。するとデモ隊が封鎖した場所は公共スペースというより、神の庭、に思える。神の庭で裁きを待つ人々、いずれが正しく、いずれが間違っているにしても、これは必要不可欠な儀式ということだろう。最後は流血の大参事、というのだけは避けて欲しい。だが神の裁きは時として残酷、ということも。ちょっと心配なタイである。