仁寺洞の金明湯
そのまま歩いていくと、中国ではお馴染みの味千ラーメンが店を出していた。その隣にはトンカツのサボテンが店を出している。日本の外食産業もかなり入ってきているようだが、この2つが隣同士というのは何となくイメージが合わない。繁盛しているのだろうか。
右側に公園が見えてきた。ここの塔は国宝だと聞いたので見に行ったが、完全に囲われていた。傷みが激しいのだろう。なかなか良い雰囲気の模様が描かれており、興味深い。公園には沢山の老人が木陰に腰を掛けていた。なんでこんなにいるのだろうかと思っていると、実に涼しい風が吹いてきた。モンゴルは涼しかったが、ソウルは比べれば暑い。その中で、この場所に座りたくなる気持ちは十分にわかる。
そこは仁寺洞の入り口だった。仁寺洞、10数年前、一度だけ行ったことがある。骨董屋街、何となく古い物を売っている店が多いという印象があった。そして韓定食の店が脇道にある。韓国の銀行の人に連れられて、そこへ行ったことがある。
だがここも観光地化していた。日本語と中国語が飛び交っていた。私は韓国のお茶についての情報を集めたかった。茶博物館と書かれた所へ行ってみたが、そこは博物館ではなく、茶葉を売る店、そして喫茶店となっていた。韓国茶の歴史など、一遍も出てこない。すぐに店を出てしまった。
ふらふらと歩く。すると1軒のお茶屋が目に入った。何となく入る。この辺はフィーリングだ。小さなその店、おばさんが『何を探していますか?』と日本語で聞いてきた。『ウメチャ、ゆずちゃ?』と言われたので、『茶の木の葉で作った韓国のお茶を見せてほしい』というと、おばさんの目が変わったようだ。
『英語は出来るか』とその後は全て英語の会話になった。日本語もかなりできたので、不思議だったが、確かに彼女の英語は完璧で日本語より上手かった。『韓国茶の何が知りたいの』というので歴史と答えると、彼女はノートに3つの地名を書いた。『済州島』、これは歴史が新しい。『宝城』、ここは日本時代に茶木を植えた場所。そして『河東』、ここが韓国茶の起源だ、という。地図がないのでどこにあるのか分からないが、取り敢えず頭に入れる。
そして出てきたお茶にビックリ。韓国緑茶、といいながら、それは緑茶を数年寝かしたプーアール茶のような茶だった。紅茶もある、ということで、同じ茶葉から作った紅茶を飲んだが、甘かった。200年以上の古樹の葉で作ったという。非常に特別な茶。智異山という山の中に自生しているらしい。そんなところがあるのだろうか。興味が湧く。
いつしか店に入って2時間が過ぎてしまった。途中欧米人と日本人のグループが入ってきて、茶を買っていった。店主である平安さんは『分かる人にしか良さは分からない』といいながら、商売の難しさを語っていた。