みんなで作ろう!「ベトナム旅行便利帳」

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 【[ベトナム街角笑ケース]

第21話:運転手には見えない信号
2009年08月03日
 
今週の笑ケースも、またまたバイクに関する話である。ホーチミン市の人口約800万人余に対し、登録されているバイクの数が300万台を超えるというほど、バイクは生活必需品。その話題が多くなるのは、まあ仕方がないのかもしれない。

まずは写真をご覧頂きたい。

ちょっと分かりにくいかもしれないが、信号機と停止線が同じ位置にあるのが、お分かり頂けるだろうか。これなどはマシなほうで、時には、停止線より手前に信号機がある場合もある。当然のことながら、停止線で停まっている運転手には、信号が青になったのが見えない。

どうなるかというと、信号が青に変わると、後続車両がクラクションを鳴らし、それでようやく先頭車両は「ああ、信号が青になったのだな」と気がつき、やおら車を発進させるのである。

先日、日本からやって来た客人が、これを見て、
「そもそも、どうして信号機が、道路の向こう側にないのかね?」
と質問してきて、小生も答に詰まってしまった。どうしてだろう? 確かに、日本のように、対面に信号を設置すれば、こういうことは起こらないのに...。

数年前だったか、国外から多額の資金援助を得て、信号機の整備が行われた。その時に、信号機の位置も変わるのかと思ったら、位置はそのまま。それどころか、現在、使われている信号機の横に、もう一つ新しい信号機が設置されるというケースもあった。信号のない交差点は、まだまだたくさんあるのだから、そこにつければいいのに...。

これに関しては、ホーチミン市民からも「これではお金の無駄遣いではないか」と、当局に批判の声が寄せられていたようだ。ごもっとも。

「停電で動かない信号機」の項でも書いたが、やはりホーチミン市民は、信号をあまり見ていないのだと思う。信号が赤か青かに関係なく、進めるときに進む。それが当地流なのかもしれない、我々日本人は「信号を守ったほうが安全で効率が良いのに」と感じるにしても。

そういうわけで、今週の笑ケースは「運転手には見えない信号」をランクインさせたい。それでは、お後がよろしいようで...。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第20話:内容量が違うビンジュース
2009年07月27日
 
今晩は仕事がたてこんでおり徹夜になりそうなので、スタミナドリンクを買ってきた。日本でお世話になった「リゲイン」はないけれど、「レッドブル」「スティング」「サムライ」など、いくつかの製品が出ている。

どれもかなり甘ったるい味が特徴。炭酸が入っているスティングが、小生にはいちばん飲みやすく、本日もそれを2本、購入した。そして帰宅して机の上に置いたところ、「あれ?」である。写真をご覧頂きたい。

左右で内容量が違うのが見て頂けることだろう。手作りの製品のみならず、このような工業生産品でも、結構、サイズや量にばらつきがあるのが、ベトナムなのである。この程度のことは日常茶飯事。

以前、事務所内で席替えをしたときのことである。机を移動するのが面倒なので、引き出しだけ抜いて入れ替えをしようと思ったら、微妙にサイズが違っていて入らない。同じ業者に注文した、同じ型番の事務机であるにも関わらず...。

A4のコピー用紙を注文したら、大きさがまちまちで驚いたこともある。机は、まあ、恐らく手作りなんだろうから、統一性が保てないのも分からないではないが、コピー用紙のラインなんて、完全に機械化されているはず。それとも、パートのおばさんが、一枚一枚カッターで切っていたりするんだろうか、まさか...。

ベトナムコーヒーを入れる金属製のフィルターも、品によって穴の大きさが違うらしく、コーヒーが落ちる時間が全然違う。あるものはお湯が2分程度で落ちきるのに、15分以上かかるものもある。ちなみに、後者は明らかに不良品だ。

つまり、ビンジュースの中身が違う程度で驚いていては、ベトナムで生活はしていけないのであ~る! そういうわけで、今週の笑ケースは「内容量が違うビンジュース」で。それでは、お後がよろしいようで...。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第19話:1ドル×100枚=100ドルにあらず
2009年07月20日
 
小生の会社では、給与は現金支給である。最近は、銀行振り込みの会社も増えて来たようだが、ベトナムでは、銀行というものが市民の生活に定着して数年と、まだ馴染みがない。社員たちの給料を、一つずつ封筒に入れて手渡すのは、月末の大切な仕事なのである。

しかし、そこはベトナム。一筋縄でいかないことが多い。



まず通貨。ベトナムではベトナムドン以外に米ドルもよく使われる。さらに米ドルのほうが信頼されていて人気が高い。だから日本人社員のみならず、ベトナム人社員でも、「なるべくたくさん、米ドルで支払って欲しい」という。

さらに、同じ米ドルでも、小額紙幣ではダメで、50ドル以上の高額紙幣を用意する必要がある。「1ドル札が100枚でも、100ドル札が1枚でも、同じ100ドルじゃないか」という日本人の常識は、ここでは通用しない。実際、町の両替屋に行くと、高額紙幣のほうが高く買ってもらえるのだ。

そういうった社員たちの希望に応えるため、月末になると、小生は「ドル屋さん」を会社に呼ぶ。
「今月、100ドル札は何ドルだい?」
「そうですねえ、1ドル札だけなら103枚でいいですよ」
「それは高い。10ドル札を混ぜるから、もう少し安くしてもらえないかね」
などという交渉をする。

もちろん、ここはベトナム。会社が支払いを受けるときの通貨はベトナムドンがほとんど。これをドルに代えると為替差損が出る。米ドルの高額紙幣に替えるとその差損は、ますます大きくなってしまう。だから小額紙幣やベトナムドンを混ぜて支払うようにする。

例えば1000ドルの給料を支払うのに、100ドル札が6枚と、20ドル札が10枚と、それから50万ドン札が7枚と2万ドン札が4枚…、という風に、米ドルとベトナムドンを混ぜて封筒に入れていくのだ。

そういうわけで、月末になると小生は、写真のように米ドルとベトナムドンの紙幣の束と格闘しなければならないのである。今週の笑ケースは「1ドル×100枚=100ドルにあらず」。それでは、お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第18話:ベトナム版・ウオシュレット
2009年07月13日
 
トイレというのは、謎や笑い話が生まれやすいところだと、小生は思うのだが、ベトナムのトイレに関しても、いろんなネタがある。例えば…。

 ベトナムでも、最近、設置される便器のほとんどは洋式だと思うが、使い方が分からず、便座の上に靴のまま上がって、そこでしゃがんでしまう人がいるそうだ。確かに便座の上に、くっきりと靴型が残っているのを見ることは、時々ある。

 水洗便所も急速に普及しているが、レバーを動かしても、まったく水が出ないことがある。というか、結構、多い。そういう場合は、近くに水を貯めたバケツとひしゃくがあるはずなので、それで流す。

 それらの水洗便器も元々は、ちゃんと使えたはずなのだが、ベトナムの製品は何でも壊れやすい。タンクの栓が甘くて水がたまらなかったり、タンクに水を送る管に問題があって、水が来なかったりして、水タンクは「張りぼて」と化する。そうして、「やっぱり、昔ながらのバケツにひしゃくがいちばん確実だね」という結論になるのだ。

 しかし、ベトナムのトイレにも、先進的なところがある。何と! ウオシュレットがついているのである。もちろん、そんなに普及率は高くないが、かといって低くもない。そのウオシュレットの写真が、これである。

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 そう、日本のウオシュレットとはかなり違う。最初にこれを見たときは、何か分からず、「ベトナムの人は、よくシャワーを浴びるから、トイレで大をしたときにも、ついでにシャワーを浴びるのかな」などとも考えた。しかし、いくらなんでも、そんなバカなことはない。

 どうして、全般的に前近代的なベトナムのトイレにあって、ウオシュレットなどという近代的なものが、備わっているのか。「清潔好きだから」とか、「紙が流せないトイレが多い(本当です)ので、水洗いする」だとか、諸説ある。小生も使うことがあるが、気持ちが良いものである。

 後ろについたレバーを引くと、意外と強い水流が出てくるので要注意。だから、ウオシュレットを使った後の便座は、水で濡れていることが多い。

 そういうわけで、今週の笑ケースは、「ベトナム版・ウオシュレット」で。それでは、お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第17話:昼下がりには使えなくなる会議室
2009年07月06日
 
ある取り引き先に打ち合わせに行った。最初は11時からの予定だったのだが、前の仕事が延びてしまい、先方の会社に着いたのは12時半頃。
「この時間帯は、アレで会議室は使えないし、昼飯に行きますか」
 と先方。
「そうですね、この時間はアレですからね」
 と私。

 どうして、この時間帯は会議室が使えないか。アレとは何か。その答が下の写真である。

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 これは同社の会議室。横になっているのは、お昼寝中のベトナム人従業員たちである。そう、ベトナムでは、昼食の後に昼寝をする習慣があり、この間、スペースに余裕のある会議室は、お昼寝場所になってしまう。昼休みは2時間。つまり12時から午後2時までは、会議はできないのである。

 彼らは、ちゃんとお昼寝用のゴザと、簡単な掛け布団、そして枕を会社に置いている。昼寝用のゴザは、縦に三つ折にして、クルクル丸めると小さくなる「会社でのお昼寝用ゴザ」が、ちゃんとスーパーなどでは売られているのである。

 会議室に入りきれない人も、机の下に頭を入れて寝ている。またその場所もない人は、机に突っ伏したり、椅子を2つ並べたりして、器用に寝ている。とにかく、孫のいそうなオジさんから、うら若き乙女まで、みんな枕を並べて、堂々とお昼寝をするのだ。

 そんなわけで、昼休みに社内を移動するときは、総務部長の顔をまたいだり、ずらりと並んで寝ている若い女性スタッフたちの足をまたいだりするものだから、気を遣う。

 元々、この昼寝の習慣は、他の暑い地域と同じく「一日でいちばん暑い時間帯は、仕事にならないから」という理由で根付いたようだ。その分、始業時刻は早めで、8時ごろというところが多いように思う。日本なら9時・5時のところ、1時間早く働き始め、1時間長めにお昼休みを取るというわけだ。

 ただ、外資系の会社では、昼休みが1時間しかない会社が多く、お昼寝をする余裕もないようである。また、ベトナム資本の会社でも、以前に比べれば、昼休みが短くなり、お昼寝をする人も減って来てはいるようだ。ベトナムも世知辛くなったものである。

 そういうわけで、今週の笑ケースは、「昼下がりには使えなくなる会議室」にしよう。それでは、お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第16話:あの「そごう」がベトナムに進出!?
2009年06月29日
 
日本の大手百貨店の一つ「そごう」はベトナムも店舗がある。ウソだと思うなら、写真を見て欲しい。ほら、見覚えのあるロゴ、ちゃんと「SOGO」と書いてあるのが見て頂けるだろう。

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 しかし、この「そごう」ベトナム進出第1号店、おそらく日本の「そごう」の人はほとんど誰も知らないだろう。日本の「そごう」とは、何の縁もゆかりもないお店なのだから。

 この「そごう」、在住日本人の間では有名なお店である。しかし、あくまでも「ネタ」として、であるが。小生の周りで、店内に足を踏み入れたことがあると言う日本人は、1人もいない。以前は確か、リートゥーチョン通りにあったのだが、閉店。在住者の間では、今年8月31日に閉店する、あの心斎橋の「そごう」以上に、惜しまれたものだ。しかしその後、グエンチャイ通りに移転して、今も健在である。

 小生がわざわざ言うまでもなく、ベトナムは違法コピー天国である。そして、日本製品は高品質という絶対の信頼感がある。そのせいか、いろんなところで、偽の「日本ブランド」が横行している。

 次の写真を見て欲しい。

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 この蛇口には「TOTO」と書いてあるが、ロゴも違うし、新品のときから、閉めても閉めても、水が止まらないこの蛇口が、本物のTOTOとは考えにくい。この「TOTO」、便器も作っているようだ。あるところで、汚物が流れない便器があり、「こんな出来損ないの便器を作っているのは、いったい、どこの会社だ」とロゴを確かめたら、この「TOTO」というロゴが書いてあった。

 最後は家電メーカーのSanaky。ロゴの下にはTokyo Japanと書いてある。

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もう何年も前のこと、あるベトナム人から「オレの送風機は、日本の有名メーカー製だ」と誇らしげに見せられたのが、このSanaky製だった。私が「サナキーなんてブランドあったっけ?」と首を傾げていると、「これは日本でも有名なブランドだぞ、どうして、日本人のお前が知らないんだ?」と、怪訝な顔をされた。日本にもあるのかもしれないが、少なくとも、日本を代表する有名ブランドでないのは確かだ。

 そういうわけで、偽の日本ブランドはいっぱいあって、探していると退屈しない。今週の笑ケースは、「そごう」ベトナム進出第1号店を殿堂入りにしたい。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第15話:バラバラ単語事件
2009年06月22日
 
「ベトナム語は1単語1音節」なのだそうだ。だから、こういうことになってしまうのである。

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 今回の写真は、小生の家の近くにあるコピー屋さんの看板。「photocopy」という一つの英単語が、音節ごとに4つに分解されてしまっている。これは、看板が縦長であるという理由だけでなく、冒頭に書いたように、1音節を1単語として把握するベトナム人にとっては、これが4つの「単語」と理解されてしまうのだろう、と私は推測している。

 小生の友人のベトナム人に、Le Thuという女性がいる。カタカナで書くと「レ・トゥー」。「レ」が姓で、「トゥー」が名、これでフルネームなのだ。だからベトナム人にとって、日本人の名前は、とにかく長過ぎて覚えにくいらしい。だから、覚えやすいように、勝手に短縮されてしまうことがある。

 日本から出張でやって来た「真由美」さんを、ベトナム人スタッフに紹介したら、
「あなたの名前、長過ぎて覚えられないわ。そうねえ、あなたは『ミ』さんにしましょう!」
 と勝手に命名されてしまった。ちなみに「ミ」さんというのは、ベトナム人女性の名前としてもよくある名前。語源は同じ「美」である。

 「雅彦」さんは「コ」さん、「真一」さんは「チ」さんに、「あなたの名前は、明日からこれね」と宣言されてしまった。いずれも最後の音をとっただけ。法則性があるというか、いや、それにしても安直過ぎないか。

 地下のトンネル要塞があることで有名な「クチ」の町も、あれは1単語ではなく、「ク・チ」と2つの単語。少数民族の住む北部の町「サパ」も「サ・パ」と2単語である。ちなみに首都ハノイは「ハ・ノイ」。

「日本語で『ありがとうございます』は、なんていうの?」
 と、ベトナム人から質問され、
「ありがとうございます、って言うんだよ」
 と、説明しても、ほとんどの人は、あまりの長さに目を白黒させてしまい、1回では聞き取れない。
「ベトナム語なら、Xin cam onと3語なのに、日本語は10語もあるのね!」
 と、変なところで感心される。

 話がすっかり脇道にそれてしまった。看板の話に戻ろう。「photocopy」という1つの単語が、ベトナム人には、4つの単語として認識されている」という説は、ベトナム語を習ったことすらない、まったくの素人の戯言ではある。が、単に4つに分けるだけでなく、「copy」の部分が、「cop」「py」と、一つpが補われている点に、何となく意味ありげなものを感じてしまうのだが…。

 そういうわけで、今週の笑ケースは4つに分解されてしまった単語、名づけて「バラバラ単語事件」の看板で。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第14話:チケットがなくても入場できる!?
2009年06月15日
 
先週、所用があってハノイに出張した。仕事は無事に終わって、「さあ夕食後は、ホテルに戻って仕事かな」と思っていると、取引先のAさんが、
「今晩、これからオペラハウスへ、ベトナム国立交響楽団の演奏会を聞きに行くんですよ」
 という。

 実は小生、クラシック音楽の大ファンである。ベトナム国立交響楽団(VNSO)は、その名の通り、ベトナムを代表するオーケストラ。今晩は日本人指揮者の本名徹次氏の指揮で、ベトナムを代表する人気女性歌手であるミー・リンと協演するという。ホーチミン市にもオーケストラはあるが、VNSOに比べると格段に落ちる。たまっている仕事は気になるが、できるものなら、久々にレベルの高い生のオーケストラを聴いてみたい。

 ところが、このコンサート前評判が高く、チケットはとっくの昔に完売とのこと。チケットを持っているAさんとオペラハウスに行き、会場の前に出ていたダフ屋と話をしたところ、定価が25万ドンのところ、90万ドン(約5000円)だという。これでは高くて手が出ない。諦めてホテルに戻って仕事をしようかと考えていると、オレンジ色のポロシャツにチノパンという中年の ベトナム人男性が声をかけて来た。

「キミは、演奏会を聴かないのか?」
「聴きたいんだけどね、チケットがなくて」
「…そうか。じゃあ、オレが入れてやるから、ついて来なさい」
 
 半信半疑のまま一緒に入り口に行く。彼は、私を指差しながら、チケットのもぎりをしているアオザイ女性に二言三言、声をかけると、私を手招きした。
「話はつけたから。じゃあ、演奏会を楽しんでくれたまえ」
 彼に背中を押されるようにして入り口に向かうと、先ほど彼が話をしていたスタッフが、にっこり笑顔で通してくれた。ど、どうしてなんだ?

 しかし会場は全席指定席。入場できても、チケットがなければ会場の中に入ることはできない。エントランスホールで思案していると、先ほどの彼が現れ、「で、これがキミのチケットだから」と手渡すや、私がお礼をいう暇もないほど、あっという間に去っていった。

 私のチケットはF列の5番。前から6列目、中央やや左手の特等席である。「これを入手するのには、苦労したんですよ」というAさんより良い席だ。かくして、私は幸運にも、素晴らしい音楽に浸る一夜を過ごすことができたのだった。彼が何者だったのか、どうして、こんな特等席のチケットがあったのか、いまだに謎である。

 ベトナムでは、日本では当たり前のことがうまく行かず、困ってしまうこともあれば、今回のように、思いもよらない幸運が降って来ることもある。

 そういうわけで、今週の笑ケースは、ちょっと趣旨は異なるが、笑えるエピソードを紹介させて頂いた。写真は、演奏中に撮影したものである。中央がミー・リンで、右端が指揮者の本名徹次氏。お後がよろしいようで…。

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 【[ベトナム街角笑ケース]

第13話:前半分をちょん切られた家
2009年06月08日
 

 alt=""title="" 今回の写真、「工事中の家」ではない。「道路の拡張工事のために、前半分を強引にちょん切られてしまった家」なのである。

 この家が建っているのは、グエンバンチョイ通りという、空港と市内中心部を結ぶ通り。もう2年くらい前になるだろうか、この通りの拡幅工事が行われた。当時、グエンバンチョイ通りは、朝夕になると渋滞して、小生も、空港に行く際には不便を感じていたから、道路幅が広くなるのは、朗報だった。

 そして工事開始。ここからが、いかにもベトナムという感じだった。通りの両側には民家や商店、レストランなどがある。これらを立ち退きさせるのではなく、道路の拡幅分を、強引に削り取っていったのだ。

 それまで、奥行きが10メートルあったレストランは5メートルになり、手前に居間、奥に台所という構造だった家は、かつて台所に入る扉だったものが、玄関になってしまった。工事中、通りの両側は、玄関や表の壁を取り壊され、中が丸見えになった、まるで「家の断面図」みたいな情景が連なっていた。

 このグエンバンチョイ通り沿いには、永厳寺という観光名所にもなっている名刹がある。もちろん、これも容赦なし。正門が何メートルか後退させられてしまった。浅草の雷門が移動させられるようなものである。

 工事は終了し、以前を知らない人には、通りの両側に家や店が並ぶ普通の街の情景となっているが、この家は、そんな強引な拡幅工事があったことを示す、数少ない「生き証人」なのである。

 この拡幅工事に関しては、これまたベトナムらしい裏話がある。ベトナム在住の長い私の友人が、ある政府関係者から、
「グエンバンチョイ通りは、何年か後に拡幅されることになっている。私はそれを見越して、表通りから路地を5メートルほど入ったところにある家を何軒か購入した。工事終了後には、ちょうどこれらの家が表通りに面して建つことになり、それから転売したら、ボロ儲けができる。私が持っている家のうちの一軒を買わないか」
 と持ちかけられたそうだ。

 当時、グエンバンチョイ通りの交通はスムースで、拡幅工事のことなんて、噂にもなっていなかった。しかし、上記の私の友人は、「政府関係者のいうことだから」と、かなり割高だったにも関わらず、小さな家を一軒購入。果たして、購入後間もなく拡幅計画が発表され、友人の持ち家の評価額は数倍にあがり、彼は、自分の年収数年分に相当する売却益を得たそうだ。

 件の友人の奥さんはベトナム人。家を売ってくれた政府関係者は、奥さんの知り合いだった。
「お金が儲かったのは嬉しいですけどねえ。私が何年も汗水たらして働いて得られるお金を、妻は電話一本で稼いでしまうわけですからねえ、私としては心中複雑ですよ」

 それに引き換え、バカを見たのは、表通りに面した家を持っていた人たちである。写真の家は、元から奥行きがあまりなく、拡張幅に合わせて削り取られてしまった後は、とても人が住める状態ではない。無人のまま、取り残されてしまっているようだ。

 こうして書いていると、だんだん、笑えなくなって来てしまったが、今週の笑ケースは、「前半分をちょん切られた家」で。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第12話:4人乗りしているバイク
2009年06月01日
 
 交差点で小生が信号待ちをしていたら、目の前に4人乗りしているバイクが停まった。「これは笑ケースのネタになる」と、さっそくパチリ! ちょっと写真が見にくいが、大人2人、子供2人、合計4人が1台のバイクに乗っているのが、お分かり頂けるだろうか?

 当地では3人乗りは全然珍しくない。4人乗りは、そんなに頻繁には見かけないが、それでもちょくちょくある。私が今までに見たことがある最高記録は5人乗り。おそらく両親らしい大人が2人、子供3人という構成だった。「ベトナムではバイクがファミリーカー」と言われるが、まさにそれを地でいく情景だった。

 では、いったい、ベトナムでは何人乗りまでが合法なのだろう? 会社のベトナム人スタッフに聞いてみると、基本的には2人までだそうだ。大人ばかり3人乗りしていると、交通警察に停められるという。

 大人2人に子供1人という3人乗りはよく見かけるが、これは、どうなんだろう?
「子供は1人未満という解釈で、大丈夫なんじゃないですか?」
「じゃあ、大人2人と子供2人は?」
「法律がどうなっているか分かりませんが、ケースバイケースだと思いますよ。子供2人のうちの1人が、赤ん坊だったら、警察も停めないんじゃないでしょうか?」

 なんと大らかなことだろう!

 実際、小生が今回の写真を撮っているすぐ横に警察官が立っていたが、まったくお咎めなしだった。

 1台のバイクに相乗りをするのは、もちろん、バイクが1台しかなくて仕方なく、という場合もあるが、バイクが2台あっても、「別々に走るのは寂しいから」と1台に乗る場合もあるという。特にカップルや夫婦はそうらしい。

 というわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは、ベトナムの人間関係の濃密さを象徴しているかのような「4人乗りしているバイク」でいきましょう。お後がよろしいようで…。
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