みんなで作ろう!「ベトナム旅行便利帳」

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 【[ベトナム街角笑ケース]

第11話:停電で動かない信号機
2009年05月25日
 
 alt=""title="" 今日の笑ケースの写真は、何の変哲もない信号機、ただし電気がついていないことを除いては。

 これは今朝、出勤途上に通過した信号機。この一帯は停電らしく、この手前の信号機も、その次の信号機も、いずれも電気が消えていた。日本では、例え停電になっても信号機だけは、非常用のバッテリーか何かがあって消えないという話を聞いたことがある。

 しかし、ベトナムの信号機は、停電になるとあっさり消える。バイクで15分ほどの通勤途上にある信号機が全部、消えていたこともある。そのときは、「他が停電でなくても信号機が率先して消えるんじゃないか」とすら思ったものだ。

 それでも、大した混乱も事故もなく、道路が機能しているのは、いや、笑い話ではなく、感嘆してしまう。

 そもそも、小生がホーチミン市に来た頃は、信号機というものが、滅多になかった。今でも、相当大きな交差点でも、信号機がないところは少なくない。また、フランス統治時代の名残で、ロータリーになっていて、信号機がつけにくい構造になっている交差点もある。

 そんなわけで、ホーチミン市の人は、元々、信号機を見る習慣があまりないのだと思う。

 小生は以前、赤信号で停まっていると、バイクに追突されたことがある。加えて、追突してきた相手のほうが、
「車が通っていないのに、どうして停まっているんだ!」
 と怒るので、反射的に、
「すいません、信号が赤だったので…」
 と謝ってしまったのは、今、思い出しても不覚である。

 ベトナムの笑い話に、信号の見方を子供に教える親の話がある。
親「信号が青のときは進め。じゃあ、黄色のときは?」
子「急いで進め」
親「じゃあ、赤のときは?」
子「警察官がいないのを確認して進め」
 まあ、他の国でもありそうな冗談だが、日本に比べ、ベトナムではかなりリアリティが高い。

 これに「じゃあ、信号がついていないときは?」が加われば、完璧という感じだ。答は、さしずめ「直交している道路から入ってくる車に負けないように進め」だろうか。

 というわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは、「停電で動かない信号機」。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第10話:ヘルメットファッション花盛り
2009年05月18日
 

 小生が愛用しているヘルメットが古くなったので、買い換えることにした。中のスポンジがボロボロになって、着脱するたびに、頭にゴミがつくのである。

 ヘルメット屋に行くと、いろんなデザインのヘルメットが並んでいて楽しませてくれた。そこで今日は、ヘルメットに関する笑えるお話を紹介しよう。

 ベトナムでヘルメット着用が義務化されたのは2007年12月15日のこと。それまで「ヘルメットなんてダサイ」と目の敵にされており、実は、ヘルメット着用の法制化も何度か、庶民の反対でボツになってきたらしい。「王様の法も村の垣根を越えない」というベトナムの格言にも象徴されるように、庶民の自主性の強いベトナムならではである。

 ちなみに、反対の理由の一つに「アオザイにヘルメットは似合わない」というのがあったという。確かに、黒髪を風になびかせながら、バイクで颯爽と走るアオザイ姿を見慣れた人間には、妙に説得力がある理由である。

 それがついに義務化された後、ベトナムでブームになったのがヘルメットファッションである。ヘルメットに見えないデザインのヘルメットが次々と登場した。写真にあるのは、野球帽をかたどったヘルメット。普通のヘルメット(赤いヘルメット)が17万ドン(約950円)なのに対し、野球帽タイプは12万ドン(約670円)と値段もお得だ。

 日焼けを気にする女性には、ヘルメットサンバイザーが人気。普通のヘルメットにサンバイザーをつけて、写真を撮らせてもらった。こちらは3万ドン(約170円)。人によっては複数持っていて、デートに行くとき用の「勝負服」ならぬ「勝負サンバイザー」というのもあるらしい。

 「ヘルメットをかぶること自体が、カッコいい」と思っている人も出てきたようだ。過日、屋台でバンミー(ベトナム風バゲットサンド)を売っているオジさんが、ヘルメットをかぶっていたので、
「どうして?」
 と尋ねると、
「だってカッコがいいだろ」
 という答が返って来て、言葉に詰まったことがある。

 あんなに嫌がっていたヘルメット着用が義務化されても、それをファッションに取り込んで楽しんでしまうベトナム人、いつものことながら、柔軟というか、したたかだなあと思ってしまう。

 問題は、それらファッションヘルメットの多くは、強度が不足していて役に立たないのだという。う~ん、まさに本末転倒。

 そういうわけで、今週の笑ケース殿堂入りは「ヘルメットファッション花盛り」に決定。お後がよろしいようで。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第9話:しつこい咳には1回30円のホームサウナ
2009年05月11日
 

 ホーチミン市は本格的な雨季に入ったようである。雨に濡れたままバイクを走らせたのが悪かったのか、風邪を引いてしまった。これがなかなかしつこく、日本から持って来た風邪薬を飲んでもなかなか治らない。熱はないのだが、咳が止まらないという状態が3日も続いている。

 昨晩のことである。
「こういうときは、これが効きますよ」

 小生が住んでいるミニホテルの親父が、お弁当箱ほどの新聞紙の包みを持って来た。そこからは、プーンと漢方薬特有の臭いが立ち上っている。

「これはThuoc xong cam(トゥックソンカム)というものでね、ダンナの咳なんか、これを1回やるだけで、一発でなくなりますぜ」

 ちなみにThuocが薬、xongが蒸気、camが風邪の意味である。1包が5000ドンというから、大体30円くらい。

  「ものは試し」と、やってみることにした。

 まずは大きな鍋にたっぷりの水とこのトゥックソンカムを入れて、ぐつぐつ煮る。しっかり沸騰したら、シーツでも毛布でもいいから何かをかぶり、密閉された中でこの鍋の蓋を取って、その蒸気を吸い込むのだという。

 私はパンツ一枚になって床に座り毛布をかぶって、ぐつぐつ煮立った鍋が運ばれてくると、それを毛布の中に入れて蓋を取った。

 熱い。顔がピリピリと痛くなるほどだ。

「熱いよ!」
 というと、心配してくれてであろうか、周りに集まって来た大家の一家が、
「熱くても我慢して! 顔だけでなく、胸にもその蒸気を当てるといいのよ」
 とアドバイスしてくれる。さらに「これも入れて」と、小さな皿に入った塩を毛布の中に差し入れてくれた。

 漢方薬の臭いのする蒸気を、口から鼻から吸い込む。顔からはポタポタと汗が落ち、鼻水も出てきた。表面の温度が下がると、長い箸で鍋の湯をかき混ぜて、また熱い蒸気を立ち上らせる。カッコよくいえば「ホームサウナ」といったところだろうか。

 これを15分くらい続けたところで、ようやく、
「そろそろいいでしょう」

 とお許しが出て、毛布の外に這い出した。鏡を見ると、顔から胸まで真っ赤である。体中、汗でいっぱい。バスタオルで体の汗をぬぐう。薬草の効果を持続させるため、1時間程度はシャワーを浴びないほうがいいそうだ。

 小生が着替えて自室から出てくると、大家の一家が、
「あの中って、熱かった?」
「蒸気を吸い込むとどんな感じになるの?」
 などと次々と質問を投げかけてくる。どうして?

「キミたち、いつもやっているんじゃないの?」
 と尋ねると、一同大笑い。

「ハハハ、我が家で、あれをやった人間はいないんだ。だからみんな興味津々なんだよ。風邪を引いたときは、ダンナの国・日本製の風邪薬がいちばんさ」
 平然とした顔で、ご主人がそう答えてくれた。

 肝心の効き目だが、これが抜群。一夜明けた今朝には、あれほどしつこかった咳がピタリと止まってしまったのだから。

 まさか自分が「笑ケース」のネタにされるとは思わなかったが、今週は「しつこい咳には1回30円のホームサウナ」を殿堂入りさせることにしたい。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第8話:バイクはホンダ
2009年05月04日
 

「ベトナムでは、バイクのことをホンダって言うんだぜ」
 ホンダ(本田技研工業)に勤務する友人からこの話を聞いたとき、小生は「愛社精神を持つのはいいけれど、そんなワケないだろう」と一笑に付した。

 こちらに赴任した直後、ベトナム人スタッフから「ホンダは買いましたか? まだなら買いに行きましょう」と言われたときも、まだ半信半疑。そしてお店に行き「このホンダがお買い得ですよ」と勧められたのは、音叉のマークが入ったヤマハ製。

 同行してくれたベトナム人スタッフに「これ、ヤマハだけど?」と聞くと、「そうですよ、ヤマハ製のホンダです」と「コイツ、何を聞くんだ?」みたいな顔で回答された。いや、ウワサは本当だったのである。友よ、疑って悪かった。

 今回の写真を見て欲しい。これは路上のバイク修理屋の看板。「Sua Xe Honda」は、バイク修理の意味である。Suaが修理、Xeが車、Xe Hondaで2輪車。もちろん、ヤマハでもカワサキでもスズキでも修理してくれる。

 2輪車を意味するベトナム語も、別にちゃんとあってXe mayというが、「ホンダ」は一般名詞として、当地では完全に市民権を得ている。

 だから「お前のホンダはどこ製だ?」「オレのホンダはヤマハだ」「そうか、オレのホンダはホンダだ」という冗談みたいな会話がマジメに交わされることになる。

 ホンダが一般名詞化したのは、やはりシェアが高いから。かつてスーパーカブタイプの「ホンダドリーム」というバイクが大人気。当時、1台の値段が約2000ドルと、平均的な会社員の年収を上回る額だったので、これを買うのは、庶民にとってはまさに「夢」だったそうだ。ホンダ以外のバイクも数多く出回っている今も、いちばん人気はホンダ製と言って間違いない。

 派生した言葉もある。バイクタクシーを意味するベトナム語は「セオム」(直訳すると「抱きバイク」)だが、「ホンダオム」でも問題なく通じる。バイクを流しながら客を探す売春婦を「ホンダガール」というように、好ましからぬ用例もある。

 ちなみに4輪車はXe Toyota。というのは、真っ赤なウソで4輪車はXe hoiである。お間違えなきよう。

 そういうわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは「バイクはホンダ」。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第7話:暑いときは木陰が停止線
2009年04月20日
 

 おっとっと。もう少しで交差点で停止中のバイクにぶつかるところだった。でも、どうして、停止線まで3メートルもある、こんなところに止まっているんだ?

 ホーチミン市は、5月から10月の雨季と11月から4月までの乾季に大別され、乾季の終わりの今頃は一年でいちばん暑い。この時期になると、強烈な日差しを避けるため、バイクに乗っている人たちは、停止線ではなく、木陰で止まろうとする。だから交差点では注意が必要なのである。

 写真を見て欲しい。手前に白く見えているのが本来の停止線。しかし、信号待ちをするバイクたちは、きれいに木陰の線に従って止まっているのがご覧頂けるだろう。酷暑の季節には、このように木陰が停止線になるのだ。

 こちらに来たばかりの頃は、そんなことは知らないものだから、小生、何度か追突しそうになって、「どうして、こんなところで」と毒づいたものだ。今ではすっかり慣れてしまい、小生自身も、信号が赤だと、その手前の木陰でバイクを停めるようになった。

 ホーチミン市は一年中夏で、地元の人は暑さには強い。逆に寒さにはからっきし弱く、気温が20度を下回ると、ダウンジャケットを羽織っていたりして、笑わせてくれる。そんなホーチミンっ子でも、それでも、この乾季の終わりには夏バテする。日本人である小生などは、ここに長年住んでいるにも関わらず、ちょっと油断すると熱射病になってしまうほどだ。

 停止線でなく、木陰で信号待ちをするのは、ズボラというより、暑さに負けないために必要な生活の知恵、なのかもしれない。

 ニュースでは、南部一帯が猛暑になっていると伝えており、4月19日の最高気温は40度まで上がったそうだ。しかし25日頃から順次、雨季入りするとのこと。そうすると、気温も下がり少しは過ごしやすくなる。もっとも、雨季になると、それはそれで、いろいろ大変なのだが。

 そういうわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは「暑いときは木陰が停止線」。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第6話:「お風呂の椅子」に座って食事を
2009年04月13日
 

「お風呂の椅子みたいに低い椅子、これはいったいなんですか?」

 東京からやって来た客人を、ホーチミン市きっての人気ローカル食堂に案内したときの第一声である。

 この店、ベトナム版ぜんざいとも言われる「チェー」というスイーツの有名店。にも関わらず店名はなく、住所である「ブイチースアン通り111番地」が店名代わりなっている。約20種類のチェーが食べられ、お値段はグラス1杯30円程度とお手頃。しかし、あなどってはいけない。この店のオーナーは、このチェーで「御殿」を建ててしまったといわれるほどなのだ。チェーと並んで人気なのが、ソイと呼ばれる「おこわ」。小生がこの店を訪れるのは、チェーではなく、このソイが目的である。

 などという説明は、ガイドブックに任せるとして、椅子である。そう、長く住んでいるとすっかり見慣れてしまい疑問を感じないのだが、まるでお風呂の椅子みたいに低い椅子に座ってみんな食事をしている情景は、確かにヘン。しかも、この店だけではない。このように低い椅子のお店はいっぱいあるのだ。

「どうして、こんな低い椅子なんですか?」
 と客人。私も、知り合いのベトナム人に尋ねたことがあるが、明確な答が返ってきたことがない。この店の人の答は、
「そうねえ、狭い場所を有効に利用するためね」
 というもの。確かにこの店は狭いので、理屈は通っているが、広々したスペースのお店で低い椅子を使っているところもあったから、この答をすべてに適用するわけにはいかない。

 そういう話をお店の人にしていると、隣でソイを食べていたオジさんが一言、ぼそっとつぶやいた。
「低い椅子のほうが座りやすいのに、どうして、わざわざ高い椅子に座らにゃいかんのや?」

 これには一本取られた。確かに、我々日本人からすれば「どうしてこんな低い椅子に?」と思うが、低い椅子が当たり前の人たちからすれば、「どうして高い椅子に?」となってしまうのだろう。

 そういうわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは「お風呂の椅子に座って食事を」。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第5話:1人で鍵を28本
2009年04月06日
 

「週末、会社の入り口の鍵を付け替えましたので」
 そういって、今朝、会社の総務の女性から鍵の束を渡された。

「また、鍵ですかあ」
「そうですよ。今から説明しますから、ちゃんと覚えておいてくださいね。これが入り口のドアの鍵で、これが外側につけている南京錠の鍵。それから、これは外扉のシャッターの鍵で…」

 この国で生活する上で驚くのは、とにかく鍵をたくさん持たなければならないこと。小生が赴任してきたときも、鍵の束を渡されて「いったい、どうしてこんなに」と驚いたものである。

 写真は、私が持ち歩いている鍵の束。数えてみると28本あった。これは別に小生が特別だというわけではない。他の外国人も現地のベトナム人も、ジャラジャラと鍵の束を持ち歩いているのが普通なのだ。

 どうしてこういうことになるのかというと、やはり日本に比べると治安が良くないから。

 まず会社の鍵の束を見てみよう。入り口は2重になっており、外側は終業時にのみ閉める蛇腹式になった鉄の扉、内側には普段開け閉めするガラスの扉。それぞれに鍵があり、さらにこれに南京錠をかける。これで4つ。社内には幾つかの部屋があり、会議室、事務所など、それぞれに鍵がある。さらに自分の机の引き出しの鍵、本棚の鍵、トイレの鍵、ベランダに出る扉の鍵…。

 会社だけではない。私が住んでいるアパートでも同様。まず建物の入り口を開けるのに鍵が4つ。自分の部屋に入るのに鍵が2つ。外出中に大家さんの使用人が部屋掃除に来てくれるので、重要なものは棚にしまい、扉には鍵をかけておく。ここでも鍵。使用人といっても大家さんの親戚らしいし、盗まれる心配はしていないが、万が一、何かがなくなったときに、お互いに不信感を持たないためという意味合いのほうが強い。

 そんなこんなで、小生が常時、持ち歩いている鍵の数は28本。

 どれも必要があって持っているはずなのだが、今、鍵の本数を数えていて、どこの鍵か分からないものが出てきてしまった…。「分からないんだからいらない、」ともいえるが、捨ててしまって、あとでどこかの引き出しが開かない、なんてことになっても困るし。どうしたもんだか。

 そういうわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは「28本の鍵の束」で。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第4話:ハンモック代わりにもなる電線の束
2009年03月30日
 

「そこの上の人、何しているんですか~」
「電線を増設しているんだよ~」
 町の至るところで、写真のように、こんがらがった凧の糸みたいな電線の塊を目にする。今日、出勤途上、その電線の中に入り込んで作業をしているオジさんを見かけたので、さっそく冒頭のような質問をしてみた次第。

「電線を増設って、そこから更に増やすんですか」
「新しいビルが建ったからねえ、そこにも電気を送らないといけないだろ」
 そうやって、新しいビルや家ができるたびに、新しく電線を増やしていくから、こういうことになってしまうのだろう。

 以前に新聞で、酔っ払った男が、クモの巣のようになっている電線の上に乗り、まるでハンモックのようにブラブラ揺らして遊んでいて、捕まったという記事を読んだことがある。

 確かにハンモックのように見えなくもない。ただ、その男が遊んでいた電線、地上5メートルほどの高さにあったそうで、素面でもなかなか登るのは大変だと思うのだが…。いや、素面だったら誰も登らないか。

 こんな笑い話ですまない話もある。この電線、時々地上近くまで垂れ下がっているのを見ることがある。これに引っかかってバイクが転倒する事故が、時々、発生しているのだ。転倒で済めばまだいい。

 バイクで走行中、輪っか状になった電線に首がひっかかり、そのまま絞首刑のように宙吊りになって死亡したという新聞記事を読んだこともある。確かに、ただでさえ街頭が少なく薄暗いベトナムの通り、夜間、バイクを走らせていたら、電線に気がつくわけがない。

 政府もこういう状態に手をこまねいているだけではなく、電線を整備して、地中に埋める計画が進められている。ベトナムで活動している友人のカメラマンが、「ベトナムは、とにかくあの電線が邪魔で、せっかくきれいな建物があっても絵にならないんだよねえ」とぼやいていた。いずれはこういう情景も見られなくなり、彼の悩みも解消されるのだろうか。

 ところで、前から気になっていたことを、電柱の上に登って作業しているオジさんに質問してみた。

「これだけの電線の束、どれがどこの家のものなのか、どうやって識別しているんですか」
「アンタねえ、これだけたくさんあるんだよ、分かるわけないでしょうが」

 そんな状態で、電線の地中化計画を進めたら、う~ん、ますます大変なことになってしまうような気が…。
 
 とりあえず、「オジさんたち、頑張ってくださいね」を声をかけて、その場を後にした。そういうわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは、「ハンモック代わりにもなる電線の束」で。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第3話:お釣りの現物支給
2009年03月23日
 
写真を見ても、「これの何がいったい面白いのか」と感じられるに違いない。写っているのは、何の変哲もない5000ドン札とチューインガム。しかしこのチューインガム、じーっと見ていると、お札に見えて…、来るわけないか。実はこのガム、お釣りの1000ドン札の代わり、なのである。

 少し事情を説明しよう。今日のランチは、会社近くのちょっとこじゃれたレストランへ。ビジネスランチセット2万4000ドンに、アイスコーヒー2万ドンを注文。食事代に比べてコーヒーが高いと思うが、それはここでは本題ではない。

 食事が終わってお会計。4万4000ドンに対して、私は5万ドン札を出した。お釣りは6000ドン。ところが、返って来たのは5000ドン札とチューインガム、だったのである。

 最初は「お、食後にガムをサービスしてくれるとは」と思ったのだが、お釣りが足りない。ウェトレスさんに「お釣りが足りないんだけど」と言ったところ、「あ、そうなのよ。今、ちょうと1000ドン札を切らしていて。ガムで勘弁してちょうだいね」と笑顔で切り返されてしまった。気の弱い小生、そのまま引き下がったことは言うまでもない。

 ちなみに、お釣りが足りなくて現物支給というのは、そんなに珍しいことではない。特に多いのがスーパー。例えば5900ドンの買い物をしたとする。1万ドンを出すと、おつりは4100ドン。しかし、ベトナムの最少通貨単位は200ドン。つまり100ドンのお釣りは出したくても出せないのだ。そういうときに、キャッシャーさんは、「はい」と飴玉を出してくれる。それが100ドンの代わり、というわけ。

 先日、スーパーで買い物をした小生、合計額が3万100ドンだったのを見て、このときのためにずっと持ち歩いていた、少し溶けかかった飴玉を3万ドンの現金と一緒に差し出した。

「これなに?」
 とキャッシャーさん。
「前にここのスーパーで買い物をしたとき、100ドンのお釣りの代わりに、この飴をもらったんだよ。だから、これ100ドンの代わり」
「あの~、お客さん、飴では支払いはできません」
 あっさり拒否されてしまった。トホホ。

 余談が長くなってしまったが、というわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは、「お釣りの現物支給で受け取ったガム」で。お後がよろしいようで…。

 【[ベトナム街角笑ケース]

第2話:大雨で川になった大通り
2009年03月16日
 
現在、ホーチミン市は乾季、のハズなのである。ところが、時ならぬ大雨が降って来た。

 3時間ほども、降り続いただろうか。ちょうどお昼ご飯に出ようと思っていた小生は、空きっ腹を抱えたまま、事務所から出られなくなってしまった。食い物の恨みは恐ろしい。まさに「恨みの雨」である。

 「たかが雨程度で、外出できないなんて」というのは、ホーチミンの雨の恐ろしさを知らないからいえること。というわけで、今日の写真を見て欲しい。

 これはようやく雨が小降りになって外出できたときに撮ったパスター通りの様子。道路は冠水し、向うずねの辺りまで来ている。ここは市内中心部、東京で言えばさしずめ新宿東口アルタ前、大阪なら大阪駅前といったところか。そういった場所でも、簡単に道路が水没してしまうのだ。

 私の隣で雨宿りをしていた、天秤棒を担いだ物売りのおばちゃんに話を聞くと、「これでもねえ、水は減ったんだよ。1時間くらい前は、ワタシの膝くらいまで水が来ていたからねえ。ワッハッハ」だって。笑っている場合じゃないだろって。いや、庶民はたくましいと見習うべきか。

 水深がそこまであると、この街の主要交通手段であるバイクはお手上げ。マフラーの中に水が入ってしまい、エンジンが止まってしまうのだ。そうなると、バイクを押してとぼとぼと歩くしかない。

 よくしたもので、市内に何箇所か、いや至るところにある洪水地点を抜けたところでは、大雨になるとバイクの修理屋が、まさに雨後のタケノコのように出現する。修理代は5万ドン程度(約270円)。しかし修理をして走り出したところで、またすぐに、別の洪水が待っている。

 だから、雨量が洪水になりそうなレベルになると、外出は自重するのが賢明なのである。例えどんなにお腹が空いていても。

 というわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは、「大雨で川になった大通り」。お後がよろしいようで…。
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