今日4月30日は南部解放記念日で、ベトナムは祝日。1975年のこの日、北ベトナム軍がサイゴン市(現ホーチミン市)に無血入場し、ベトナム戦争が実質上、終わった日なのです。
わざわざこの日を選んでやって来たのは、ホーチミン市きっての繁華街・ドンコイ通りに2ヶ月ほど前にできた「カティナカフェ」。ここはドンコイ通りの起点 にあたり、カフェの窓からはサイゴン川が、向かいには1925年にできたコロニアル調のマジスティックホテルが見えるという、絶好のロケーション。
そして、この「カティナ」という名前は、実はとても由緒ある名前なのです。
フランス統治時代、このドンコイ通りは、カティナ通りという名前でした。その当時からサイゴンの街を代表する通りで、「カティナ通りを散歩する」というのは、たいそう、お洒落なことだったそうです。映画『インドシナ』では、当時のカティナ通りの様子が再現されています。
その後、フランスが撤退すると、通りはトゥーユー(自由)通りとその名前を変えました。今の名称・ドンコイ通りになったのは、1975年にベトナム戦争が終わり、南北ベトナムが統一された後です。
そんな由緒ある名前を頂いたカティナカフェですが、中身は普通のカフェ。目の前にあるトンドクタン通りは、大型車の往来が激しく、ゆっくりと昔日に思いを馳せようという雰囲気には程遠かったのが、ちょっと残念。
ちなみに、現在のベトナムの通りの名前は、歴史上の人物や事件などをつけている場合が多く、ドンコイとは「一斉蜂起」の意味。1960年に南部で起こった独立運動の名前にちなんだそうです。実はちょっと物騒な名前だったんですね。
ドンコイ通りのように、その時々の支配者が変わるのにつれて、名前が二転三転した例は珍しくありません。フランス統治時代、サイゴン川沿いに走るトンドクタン通りはナポレオン通り、ハイバーチュン通りはナショナル通りだったそうです。
南北統一後、トゥーユー通りはドンコイ通りと名前を変えました。その日、ホーチミン市民は「ああ、サイゴンから自由がなくなった」と天を仰いで嘆息したとか。
それでは皆さん、良い一日をお過ごしください。
<データ> Catinat Cafe カティナカフェ
住所:2 Dong Khoi, Q.1, TP.HCM
電話:なし
営業時間:6:30~23:00
英語メニューあり/トイレあり