「そこの上の人、何しているんですか~」
「電線を増設しているんだよ~」
町の至るところで、写真のように、こんがらがった凧の糸みたいな電線の塊を目にする。今日、出勤途上、その電線の中に入り込んで作業をしているオジさんを見かけたので、さっそく冒頭のような質問をしてみた次第。
「電線を増設って、そこから更に増やすんですか」
「新しいビルが建ったからねえ、そこにも電気を送らないといけないだろ」
そうやって、新しいビルや家ができるたびに、新しく電線を増やしていくから、こういうことになってしまうのだろう。
以前に新聞で、酔っ払った男が、クモの巣のようになっている電線の上に乗り、まるでハンモックのようにブラブラ揺らして遊んでいて、捕まったという記事を読んだことがある。
確かにハンモックのように見えなくもない。ただ、その男が遊んでいた電線、地上5メートルほどの高さにあったそうで、素面でもなかなか登るのは大変だと思うのだが…。いや、素面だったら誰も登らないか。
こんな笑い話ですまない話もある。この電線、時々地上近くまで垂れ下がっているのを見ることがある。これに引っかかってバイクが転倒する事故が、時々、発生しているのだ。転倒で済めばまだいい。
バイクで走行中、輪っか状になった電線に首がひっかかり、そのまま絞首刑のように宙吊りになって死亡したという新聞記事を読んだこともある。確かに、ただでさえ街頭が少なく薄暗いベトナムの通り、夜間、バイクを走らせていたら、電線に気がつくわけがない。
政府もこういう状態に手をこまねいているだけではなく、電線を整備して、地中に埋める計画が進められている。ベトナムで活動している友人のカメラマンが、 「ベトナムは、とにかくあの電線が邪魔で、せっかくきれいな建物があっても絵にならないんだよねえ」とぼやいていた。いずれはこういう情景も見られなくな り、彼の悩みも解消されるのだろうか。
ところで、前から気になっていたことを、電柱の上に登って作業しているオジさんに質問してみた。
「これだけの電線の束、どれがどこの家のものなのか、どうやって識別しているんですか」
「アンタねえ、これだけたくさんあるんだよ、分かるわけないでしょうが」
そんな状態で、電線の地中化計画を進めたら、う~ん、ますます大変なことになってしまうような気が…。
とりあえず、「オジさんたち、頑張ってくださいね」を声をかけて、その場を後にした。そういうわけで、今週の「街角笑ケース」殿堂入りは、「ハンモック代わりにもなる電線の束」で。
お後がよろしいようで…。
(担当:越野 南雄)