今般ご要望のありました泉京鹿さんをお招きしての
ミニ読書会を開催します。読書会と言っても
ゲストのお話を伺い、質疑をするものです。
泉さんは現代中国小説の翻訳家として
「兄弟」(余華著)、「水の彼方」(田原著)、
「悲しみは逆流して河になる」(郭敬明著)など
数々の翻訳本があり、最近は以前訳した水煮三国志が
マンガ化されるなど、ご活躍中です。
現代中国を知る上で重要な社会の動き、
若者の動向などをお話頂けると思います。
また翻訳にご興味のある方も是非ご参加ください。
・日時 11月26日(土)午後2-4時半
・場所 恵比寿
・ゲスト 泉京鹿さん(翻訳家)
・演題 「現代小説を通して見える中国」(仮題)
・参加人数 12名まで(参加受け付けは先着順)
・参加費用 2,000円
(3) トルファン
時差の関係から日の出は遅いと思っていたが、北京時間午前7時過ぎには既に明るくなっていた。しかしホテルの朝食は8時から、今日の出発も10時からと基本的には新疆時間感覚で動く。ウルムチは日中の日差しは強いが、朝夕はだいぶ涼しく、気持ちが良い。
10時にJ氏、S氏そしてN嬢が登場した。N嬢は今年の3月まで横浜の大学の大学院に留学していた才媛。正直服装からしても眼鏡一つとってもウイグル人には見えない。彼女自身も「日本ではよく日本人に間違えられた」というぐらい。ウルムチでは目立つ存在か。7月から新疆財経大学に正式の採用になったとか。立派な先生である。
今日は元々列車で夜到着予定が昨日着いてしまったエクストラデー。協議の結果、トルファン日帰り旅行となった。車も急遽手配。観光シーズンで難航したが、何とかJ氏が確保してくれた。そのバンに乗り込んだのだが、S氏は「まだ朝ごはん食べてない」と車を街中に停める。ついでに水も確保して出発。
トルファンの風力発電
トルファンは中国でもっとも標高が低い場所。何と海抜‐154m。ウルムチからだと一気に1000m近く駆け降りることになる。片道2車線の道を車は軽快に飛ばす。天気も良い。絶好のドライブだ。
途中付近一面に巨大な風車のようなものが見えてきた。思わず車が停まる。何だこれは。白い羽がグルグル回っている。風力発電の設備がどうだろうか、数百台設置されている。確かにこの辺りは盆地で風が強い。風力には適しているかもしれないが、これだけの規模とは。流石中国。
現在中国全土には3万4千本の風車があると言う。この5年間で設備容量は20倍に伸び、アメリカを抜いて世界一になっている。しかし中国国内では内モンゴルが約3割のシェアを持ち、新疆は上位5位にも入っていない。恐らくは新疆内の電力は十分足りており、もし内地に電力を送ろうとすれば、送電線の問題があるのだろう。
思い出すのはお知り合いの経済作家黒木亮氏が「排出権商人」(講談社)執筆の為、単身ウルムチに乗り込んだ話。彼が見た風景もこれだったのだとようやく合点がいく。因みにこの本には私も色々と協力している。
観光客が見学するための博物館も建設中だ。これは中国が国家政策として推し進めているプロジェクト。実際に目の前で見ると壮大だ。もしこれで本当に電力が賄えるのであれば原発は不要なのだろうか・・。組み合わせが重要か。
中国人観光客が工事現場に足を踏み入れ、写真を撮っている。私も撮ろうと思い、踏み込むと何とそこは砂漠の砂。一瞬にして足が砂だらけになり、靴に砂が入り込む。これには参った。砂を落とそうにもそう簡単ではない。
長い一日が終わり、ホテルへ。荷物をM先生の部屋に預けており、それを引き取ってようやく自分に部屋に落ち着く。そして唯一の懸念、インターネット接続を試みる。が、普通ホテルの机の上にあるネットケーブルが出ていない。引出しにも入っていない。どうなっているんだ。ある程度以上のホテルでネットが繋がらないはずはない。
仕方なく、フロントに電話。しかし、「ネットケーブルが無いのなら繋がらないわね」とすげなく電話を切られそうになる。そんな馬鹿な、何とかしてと訴えると、「でもケーブルの予備はない」と言い放つ。訳が分からず食い下がると「じゃあー誰か見に行くから」と如何にも困ったといった感じで答えが来る。
そしてやって来たのはトランシーバーを持った警備のおばさん。私の訴えを聞いても、「なければ仕方がないわね」と帰ろうとする。そんな、何とかしてくれ、と再度叫ぶと「そんなに困っているなら探してきてあげる」と言って出て行った。
一体どうなっているのだろうか。ネットケーブルの予備が無いとは。お客の中にはケーブルを持ち去る人もいるだろう。その予備ぐらいは当然備えていなければいけない。顧客サービスの基本がなっていない。
5分ほどして警備のおばさんが戻ってきた。手にはやけに短いケーブルを持っている。繋いで見てくれというと「あたしは何にも分からない」と答える。じゃあーこのケーブルはどうしたんだ。「予備はないから、オフィスで使っていたケーブルを引き抜いてきてあげた」と言うではないか。これはトンデモナイことだが、私にとっては実に有難いことだ。
その短いケーブルを電話線ジャックに繋ぐと確かに接続できた。但し線が短すぎて机の上にPCを置くことは出来ず、荷物置きの上にPCを備えて何とかメールチェックした。それでもおばさんの行為には懐かしい何かを感じ、無性に感動していた。
中国及びアジアをもっと知ろう、ということで、
ゲストをお招きしてお話を聞く「寺子屋ティーサロン」。
第4回は韓国をテーマとします。サムソン、現代などアジアでの
台頭もあり、注目されていますが、最近は経済的にも社会的に
大きな変化が起きているように思います。
講師は元銀行員でハングル留学生、ソウル支店の勤務経験もある
愛知淑徳大学真田幸光教授にお願いすることにしました。
真田教授は韓国ばかりでなく広くアジアを活動の場としておられますので
広い視点からのお話が聞けると思います。
また真田教授からは既に日本とアジアに関する詳細なレポートを
頂戴しております。今回ご参加の皆さんにはこれを事前にお配りし、
当日韓国以外の質問もお受けるする予定です。
皆さん、是非ご参加ください。
・日時 11月19日(土)午後2-4時半
・場所 恵比寿
・ゲスト 真田幸光教授(愛知淑徳大学)
・演題 「韓国最新事情」(仮題)
・参加人数 12名まで(参加受け付けは先着順)
・参加費用 2,000円
※この会はゲストが1時間程度お話し、
その後はフリートーク(質問コーナー)とする。
そのレストランは1階と2階に分かれており、1階は庶民的、2階は豪華な感じであった。我々は真っ直ぐ2階へ。しかし2階ではちょうど従業員のミーティングの最中。開店前に入ってしまったらしい。外国人だからだろうか。
実はこのお店、S氏の知り合いが経営者であった。その経営者はやはりウイグル人で、しかも大阪に留学していたという。帰国後大学で教えていたが、辞めて友人とレストラン経営をはじめた。経営は順調かと聞くと「ボチボチですね」と日本語で答える。実に落ち着いた雰囲気。日本の料理を参考にしたか、と聞くと、サラダにわさびを入れただけとか。このサラダ、後で食べるとなかなか美味しい。
ようやく従業員が動き始めた。先ず大皿にスイカとハミ瓜が運ばれる。このハミ瓜は日本のメロンのようで本当に美味しい。どうしてこれを日本に輸出しないのか、と食べた人は皆思うフルーツ。ハミ瓜にかぶりつく。これは美味い。スイカも大きく切られていて、甘い。取り敢えず料理の前のフルーツ。そしてなぜか主食の麺が登場。
このラグメン、という名前の麺。麺にこしがあり、かつ上にニンジン、トマト、などの具を炒めた物を載せて、かき混ぜてから食べる。実に美味しい。まるでスパゲティーのようだと言うと、J氏が高らかに言う。「スパゲティーをイタリア人に教えたのはウイグル人である」、なに、それは初耳だが、確かにこの麺と具はスパゲティーである。説得力あるなあ。
更にJ氏は続ける。「ピザもイタリア人に教えた!」、えー、それは・・。しかし確かにピザの生地はある意味ではウイグル人がいつも食べるナンである。具もスパゲティーと同じような物か。それにチーズは山羊のチーズを使えば・・、ピザもできるね。これは驚きである。
そしてシシカバブ‐が登場した。このカバブー、羊の肉が実に柔らかい。塩味も程よく聞いている。うーん、この店は実にウマい。東京に出店欲しい、と伝えたがオーナーは、「日本でのビジネスは難しい。材料もない。ウルムチで十分」と断られた。
そして周囲を見てみるとビックリ。いつの間にか日が落ち、お客さんが集まっていた。皆いい服を着て、社交場のように集まっている。女性が多い。S氏によれば、「男性はラマダン中、各人の家に集まり、毎日宴会をしている。女性たちはレストランにやって来て、食べている」うーん、ラマダンのイメージは崩れる。面白い。
外へ出るとまだ完全には暗くなっていなかった。突然大きな音がした。道路を見ると車がぶつかっていた。そのぶつかり方が普通ではない。道のど真ん中で、前の車が急に左に曲がり、後ろの車がその横腹に突っ込んでいる。どうしてこうなるのか。両方の運転手が言い合いをしていたが、何故か警察は来ない。その内話が着いたのか、両車は何事もなかったように走り去った。
車で大バザールに向かう。市内の南、モスクが見える。するとその横の建物に何とカルフールのマークが地味に溶け込んでいた。そういえば、確か以前イスラム社会とカルフールで悶着が起きていた気がする。そうするとこれはカルフールが出来るだけの配慮をした結果なのだろう。中にはケンタッキーもあったのだが、いずれも自らのブランドカラーは消している。商売はお客様次第ということか。
確かに大バザールと言うぐらいだから規模は大きい。何でもイスタンブールに次ぐ規模とか。私のイメージのバザールは屋外だが、ここは屋内。大きな建物が3つほどあり、店舗は中にある。干しブドウが目に入る。名産品である。ジュータンがあり、玉など宝飾品がある。内地から来た観光客が、土産物を買い込んでいる。ここでは基本的に北京語で事が進んでおり、観光客向けの市場である。中東からも多くのバイヤーが来ていると聞いたが、その姿は見られない。
N先生が楽器の前で止まる。ウイグルの民族楽器、タンバリンのような楽器を買う。J氏は折角ウイグルの楽器を買うのだったら、ウイグル人から買って欲しいと言ったそうだ。そのあたりにこの地域の難しさが顔を出す。売り子は少数民族が多い。ベールをすっぽり被っている女性が携帯電話をいじっている姿は何となく微笑ましい。
夕方も6時半を過ぎたが、日の高さから見ても午後の早い時間帯にしか見えない。新疆には新疆時間と言う時差がある。北京とは2時間。まだ4時半と言うことだ。しかもさっき3時前に昼食を取ったばかりだが、レストランに向かう。
辰野の地下街に入る所に、中国銀行があった。そこの前にはウイグル人のおじさん達がたむろ。一瞬にして25年前の上海が蘇る。当時外国人はバンドにある中国銀行に口座を開き、送金があるとそこへ手続きに行く。外にはウイグル人が待っており、必ず「チェンジマネー」と声を掛けられる。闇両替はレートが良いとのことだったが、当然違法であり、時々外国人留学生が捕まって、新聞に載ったりしていた。
ウルムチのおじさん達は何と正にその闇両替屋であった。がどうみても闇ではない。実に堂々としており、人民元の札束を手に握りしめ、お客が来ると銀行内に一緒に入り、お客の外貨を確認している。そして何と店内に備えられた現金数え機に自分の人民元の現金を入れて見せ、偽札でないことを証明していた。これは一体何なんだ。銀行も黙認している両替である。
実は北京ではこれほど大胆ではないが、非合法の両替は存在している。そして銀行側も顧客サービスの一環として彼らを紹介していると言われている。中国における外貨両替は一人年間5万米ドルまで。どうしてもその枠をはみ出す人は非合法の手段を使わざるを得ない。それは違法と言うより庶民の知恵のようなものだが、ウルムチのそれはちょっとした知恵の域は遥かに超えている。中国経済の規模が拡大する中、外貨両替枠の拡大があってよいのでは、と思うのだがどうだろうか。
ウルムチの市内中心に日本人が作った地下商店街がある、という話は以前より聞いていた。辰野名品広場、新疆人なら誰でも知っている。我々も連れて行ってもらった。1998年に建築面積約3,300平方メートルでオープン、現在では当時の約3倍の11,000平方メートルにまで拡張された。
なぜこんな所に日本企業が?それは大阪の辰野と言う会社の辰野専務による決断だったらしい。ウイグル人留学生の誘いで訪れたウルムチ、そこに可能性を感じたとあるが、それは当時としては凄い決断だろう。この感覚は見事的中し、政情不安などがありながらも、今では辰野の地下街はウルムチの名物。
実際行って見ると、地下商店街という感じではなく、先端ファッションを扱う日本のブティック街。DHCなど日本メーカーも店舗を構えていた。ウイグル人によれば、個々の価格はかなり高いということらしい。
09年ウルムチ暴動があった年、辰野氏は亡くなった。暴動を見ていたらどんな思いだったろうか。名誉市民の称号が与えられている。
M先生が博物館に行きたい、ということで、市内中心にある自治区博物館へ。北京時間4時までに入場しないと閉館と聞き、急いで行く。現在中国の博物館はどこも無料。これはとても嬉しいサービスであるが、中には参観者が多過ぎて困る所もある。
ここは閉館間際でもあり比較的空いてはいたが、それでも団体観光客が多数いた。我々は勝手に参観しようと思っていたが、J氏はどこかへ消え、何かを探している。10分ぐらい待つと、何と日本語の若い女性ガイドさんが登場。13の少数民族について詳しく解説を始める。
私が注目したのは中国東北地方から清朝時代に移住させられたシボー(錫伯)族。実は中国では既に満州語は死語となっており、満州語が読み書きできる人々はかなり限られている。満州族はとっくに漢族化してしまったと言うこと。清朝時代の資料もある程度は漢文で書かれているようだが、勿論満州語で書かれている物もあり、現在この資料が読める唯一の民族として、中央政府もシボー族を北京に呼んで、解読に当たらせていると聞いたことがある。何だかとても不思議な話だが、中国の少数民族を考える場合、示唆に富むエピソードかもしれない。
そしてこの博物館のメインは「楼蘭美女」。約3800年前に埋葬された女性のミイラであるが、その保存状態の良さなどは驚くべきものがある。1980年にタクラマカン砂漠の東、楼蘭鉄板河遺跡で発掘され、世界を驚かせた。NHK特集シルクロードでも放映され、鮮烈な印象がある。
ガイド嬢が「楼蘭美女は出張中です」と残念そうに、そしてちょっとユーモアを持って宣言する。中国国内の他の博物館に貸し出されている。しかしこの博物館には他に2つのミイラがある。おばあさんと男性である。楼蘭美女は美女と言うのに、隣はおばあさん、彼女が言うには「楼蘭美女は身分が高い女性、このおばあさんは普通の女性」だそうだ。死んでも身分を問われるとは何となく悲しいが、歴史的な遺産としては大事なこと。男性のミイラは張さんと言うらしい。これはこれで面白い。
このガイド嬢、聞いてみると今年大連外国語学院日本語学科を卒業して、ウルムチにやって来た。小声で「新疆のことはまだよく分かりません」と言うのが初々しい。今日は日本人のお客さんも多く、我々が5組目とか。最後はかなり疲れていたが、元気に手を振って見送ってくれた。それにしても人材不足の新疆、内地(新疆では中国他省をこう呼ぶ)から沢山の若者がやって来ている。